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□伝達2
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《ご注意》
伝達1の続き
・破損あり
・喧嘩あり
・大丈夫な方はどうぞ









「帰還まであとどれくらいだろうね」
「わからないけど、そろそろ来てもいい頃だと思うけどなぁ…」
先程の通信でラボへと集まったうちの二機体、ヒートマンとバブルマンは不安そうに言葉を交わした。
博士が不在の中、ラボ内はメンテナンスの準備に取り掛かっている。
先程、突如空気を裂いたエマージェンシー。
閑かな雰囲気すらあった基地は今やそれを受けて緊張に張り詰め、その空気に
ピリピリと各々のセンサーが反応していた。
受けた連絡は、攻撃特化型二体の破損という俄かには信じがたいもの。
「……………」
ガチャガチャとスペアパーツや器具を用意しながら、フラッシュマンは兄二体の
破損の程度の重さに意識が向いていた。
無傷で、汚れすら得ずに任務をこなしていたという赤と、威力の高い爆弾を扱う故に強固な朱。
どれほどの破損なのか、連絡を寄越したジョーからは報告がなかった。
猪突猛進、といった表現が酷く似合う連番の上二体。
余程のことが無い限り逆境など軽くはねのけるポテンシャルは十二分に備えているが、
だがしかし突っ込むが故に足元を掬われやすい面もある。
ずっと、その面をフラッシュマンは気に掛けていた。兄達の攻撃力の高さは理解している。
それを過小評価したことも、見くびったこともない。だがどうしても、弱い面はある。
その二体が赴いたという任務先を聞いて、まさに弱点をつかれそうな、危ないのではと
危惧した直後に届いた破損報告。
知らず、器具をもつフラッシュマンの手に力が入った。
「…大丈夫かい、フラッシュ?」
「ん、…平気だ」
ふとかけられた三兄の声に、しかし返すフラッシュマンの声は堅い。
表情は無表情と険しさの中間といったものを浮かべており、どう見ても平気には見えなかった。
そうバブルマンが言葉を重ねようとしたところに、しかし扉が開いて慌ただしい音が聞こえた。
ラボ内の全員の視線がドアへ向く。
「失礼致します、隊長方をお連れ致しました!」
「!!」
「っわ…!」
ジョーたちによってラボへ赤い色と朱色が運び込まれた。その姿を見て、ヒートマンが思わず声を上げる。
「─────ッ…!!」
瞬間、ざ、とフラッシュマンから表情が消えるのを、バブルマンが視界の端にとらえる。
しかし彼も、意識は直ぐに赤と朱の色彩へと向いた。

視界に入る、暖色のそれら。輸送台に乗せられた、硝煙にまみれ無残な姿となった機体。
意識はあるらしく二体とも機能は停止していないが、普段鮮やかな機体は黒く煤け、
保護材は無残に破れ内部金属を覗かせている。
外郭が所々割れて亀裂が走り、千切れた配線や回路から火花がちらついていた。
しかし、それらは程度の差こそあれ、普段起こり得る破損と相違ない。
しかし、破損が酷いのを考慮から外しても、何より異質な箇所がある。


─────クラッシュマンの右腕とクイックマンの左腕が、切り落とされなくなっていた。





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