Main2

□勝手2
2ページ/10ページ





睨むように赤い色を見つめながら、真面目な様子で口を開いた。
「帰ったらすぐ博士んとこいけよ」
「は? メンテってことか? わざわざ?」
「念のためだ」
「……? おい?」
「いいな」
いつになく真剣な様子に気圧され、「ああ、分かった」とクイックマンが答える。
何となく変な気がしたが、帰還するというのならとクイックマンが試しにブーメランを一なぎした。
「……?」
やはり機体に異常はない。六弟の心配がすぎるのではないかとクイックマンは回路で思う。
不思議に思いながらもフラッシュマンを抱え上げ、もう潜入がばれているのだからと
ブースターの出力を釣り上げた。
纏う外套が、ゆらりと揺れる。手の中で軽くブーメランを遊ばせた。
走りだす直前の独特の緊張感に、何となく感じていた違和感が姿を消す。
かわりに、チリチリと回路にパルスが弾けた。
開いたシャッターに、向こうの方から警備ロボットがわざわざ切り裂かれに姿を見せる。
昂揚する回路の端で、靄がかかったようにはっきりしないメモリが、クイックマンは少しだけ気になった。


無事に任務を終えて基地に帰還し、クイックマンは言われたとおりすぐにメンテナンスルームにむかった。
飛行船が気流の影響で遅れたが、ちょうど昼に帰還できたこともあり、ワイリーに
すぐに見てもらうことが出来たのだ。
一見無傷だが、事の顛末を聞いたワイリーは「ふむ」と鼻を鳴らして丁寧に四男を調べた。
そして事細かにみたが、何も異常はないという結論に至った。
「ふむ。特に何もないのう。確かにメモリが少し飛んどるようだが、問題はないじゃろう。フラッシュも心配性じゃの」
「ですよねー。まぁ、ありがとうございました博士」
「なぁに構わん。いいから休んでこい。苦労をかけたの」
軽く父と言葉を交わし、労いを貰いながらクイックマンがメンテナンスルームをあとにする。
パシュン、と開いたドアからクイックマンが廊下に姿を見せると、ドアの向かいの
壁に寄り掛かっていたフラッシュマンが顔を上げた。
あらわれたクイックマンの姿に、不調を探すような視線を注いだ。
「よお、出待ちかハゲ」
「煩い捻り潰すぞ。異常なかったって?」
「ああ、聞こえてたのか。そうだってよ」
「何もエラーなかったか? 本当に違和感とかないのか?」
「あぁ、何も見つからなかったって。ったく、しつこいぞ。博士も心配性だっつってたぞ」
「……ふぅん」
呆れたように言うクイックマンに、フラッシュマンは目線を落として考えるような声をもらす。
一見気のないような返事に、クイックマンが嫌味でも言ってやろうと茶化すように続けた。
「俺の時間を無駄にしやがってハゲ、どう落とし前を…」
「博士が言うんなら、間違いねえだろうけどよ…」
「……?」
こちらの話を聞いていないのか、どこか腑に落ちない様子でフラッシュマンは独り言のように呟く。
それでも、ほんの少し落ち着いたように、小さく排気した。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ