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□勝手2
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勝手1の続き





「   …、   ───」

遠くから声が聞こえる。
スリープからの起動時に似た感覚に、クイックマンはふわふわと柔らかな意識の浮上を認識した。
システム起動。ロード。スタンバイ。閉じた目蓋の向こうに光源を感じる。
「 …、──   ──…  …  !!」
遠くから聞こえていたような声は徐々に近くなり、切れ切れに音として捕らえ始めた。
そう思った、瞬間。
「起きろ、おい起きろこのドアホ!!!」
「ん、ぁ…? フラッシュ?」
聞こえる大声にクイックマンがアイセンサーを開くと、酷く慌てた顔のフラッシュマンが視認された。
光源を背にした表情は逆行のなかでも慌てているのがよくわかり、次いで、
その背後の天井やまわりなど、見慣れない部屋の風景に違和感を覚える。
(………、─────…?)
幾度か瞬きして機能を働かせると、見慣れないどころか初めてみる風景だという結論にいきついた。
それもそのはずだ。
(────あ、れ?)
自分は任務に就いていたはずだ。
そう思い至り現状を尋ねようとするが、四兄が起きたことに安堵の様子も見せずに
フラッシュマンはクイックマンの頬や四肢に乱暴に触れる。ばしばしと当たるそれが
センサーを強く刺激して、少し痛かった。
「どこか異常ないか!? 機体は動くか!? システムは!?」
「なん、…? お、おう…何もない、と思うぞ。つかよ」
何で俺寝てたんだ?
まだ状況をしっかり把握できず不思議そうにクイックマンが呟くと、フラッシュマンは
焦った様子から一拍置いて、次いで疲れたように苛々と溜め息を吐いた。
「ったく、慣れねえハックなんかして意識飛ばしやがって! 手間かけさせんな!
 お陰で偉いキメェ目にあったじゃねえか! おら、用すんだから帰るぞ!」
「……へ? 俺がハック? 何で?」
「……、メモリも飛んでんのか。おい、どこまで覚えてる?」
「んー、この施設に着いたとこくらいだな」
「……ふーん」
「なぁ、何で俺がハックとかしてたわけ」
考え込みながら、フラッシュマンが立ち上がる。差し出される白い手を取りながら
クイックマンが上体を起こし尋ねると、フラッシュマンは馬鹿馬鹿しそうに肩を竦めた。
「下らねぇ言い合いになったんだよ、ハッキングごときで偉そうにすんなってな。
 で、お前が自分でやるっていって、あの様だ」
「お前が助けてくれたのか?」
「他に誰がいるんですかねぇ? 俺を誰だと思ってんの」
げんなりと言うフラッシュマンに「それもそうか」と返しながら、クイックマンが
立ち上がりトントンと爪先で床を叩く。
機体に異常はない。
「…………」
ドアを開け、フラッシュマンがシャッター機能を解除した。次々開いていくシャッターを
眺めていたが、フラッシュマンがくるりとクイックマンに向きなおる。
「おい」
「ん?」




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