Main2

□伝達1
2ページ/11ページ





「何やってんだお前ら」
「あれ、クイック」
くすくすと笑いあっていると、二機体の背後から声がかかった。ドアの方をむいていた
────だが、箱は閉じたままの状態の────ヒートマンが、声がした方に挨拶する。
くり、とフラッシュマンも首をまわすと七男の言う通り、赤い兄機体が立っていた。
「よう。見ての通り、ヒートのメンテやってたとこだ」
「ふーん。にしちゃ賑やかだったな」
よいしょと箱をあけ、ヒートマンもクイックマンと顔をあわせる。
「まぁ、正確? にはメンテ終わったからだらだら喋ってただけだよ。てか
 クイックこそどうしたの、メンテに拒絶反応するくせにラボにくるなんて」
「別に拒絶反応なんてしてねーよ! 拘束されんのが嫌なだけだ!」
「うわっ、言い分として微妙」
四兄の反論に白けた様子でヒートマンが突っ込みを入れると、何故かクイックマンも
七男の蓋をしめた。「何すんのさー」とまた抗議する。
それをさらりと受け流して、クイックマンが訪問の理由を述べた。
「とくに理由はねーよ。帰還してきたら、何か声がしてたから覗いてみただけだ」
「きゃー、覗いたなんて、えっちー」
「やだー、覗きよ覗きー、信じらんなーい」
覗いてみた、という単語に、蓋を閉じたままのヒートマンとフラッシュマンが面白がって茶化す。
手を口元にあて、内緒話をするように頭部をよせあって何故か女言葉でからかった。
こういうときのノリが、何故かこの六男と七男はとても相性がよかった。
「あーもーうぜえええこいつらうぜええええ!」
些細なことを茶化す弟機体たちにげんなりしてクイックマンが叫ぶと、そういえば、と
ヒートマンが蓋を開ける。
「クイックって任務だったよね。メタルとの。お帰りー」
「ああ、そーだよ」
何だか今更な労いに、クイックマンがちょっと憮然とした様子で返した。そんな
様子にかまわず、ヒートマンは、ねえ、と赤い兄に呼び掛ける。
「ねークイックはメンテとか覚えないのー?」
「はぁ、何で俺が? 必要ないだろ」
いきなりの問い掛けに、クイックマンが片眉をあげて首を傾げた。しかしその反応に、
フラッシュマンが眉間にしわを寄せる。
「うわっ、うぜぇ」
「んだとこのハゲ、だって俺には敵の攻撃なんて当たらないから、そんなの覚える必要ないんだよ」
「あぁあぁはいはいそうかよ、随分なご高説はいらねーっつーの。E缶で口塞ぐぞ」
聞きたくない、と言いたげに青い機体がぱたぱたと手を振る。面倒臭そうにいいながら
席を立ち、傍にあったE缶をクイックマンに投げ、そして序でにヒートマンを抱えた。
「おら、そろそろ寝ようや。俺は疲れた」
「はーい。部屋まで運ぶの宜しくー」
「置いていくぞ」
「酷い!」
三機体が廊下へ出ると、E缶を傾けていたクイックマンがふと七男を見やる。
「つか何でいきなりメンテ覚える云々の話題?」
「あー、だってフラッシュがお前も覚えろっていうから」
「じゃあお前が覚えろ、俺は嫌だ」
何だそれでか、と半ば呆れたように言いながら、クイックマンがまたもや黄色い箱の蓋を閉めた。
流石に腹が立ったのか、箱が放つオーラが黒くなる。
「ちょっといい加減うざいんだけどいちいち閉めないでよ燃やすよ今さっき直してもらって
 最大火力出せるんだからそれで燃やすよ」
「だああもお、馬鹿やってないで部屋戻れ馬鹿ども」
「何さフラッシュー。馬鹿馬鹿言うほうがハゲなんですぅー」
「置いていくぞ」
「やだっっ!」
きゃいきゃいと、主にヒートマンが声を上げながら、赤い機体と青い機体がだらだらと廊下を歩く。
並び歩く足音が、深夜の廊下にやけに賑やいで聞こえた。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ