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□伝達1
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めり込む不快な感触。
軋むいくつかの間接。
振りぬく爽快な感覚。

吹っ飛ぶ憎らしい横顔。



よく拳が痛むと聞いていたが、欠けらも感じはしなかった。








「よ、……し。こんなもんか。終わり。お疲れさん」
「ん、ありがとフラッシュ」
ぱちん、と腹部の装甲を閉じ、フラッシュマンがヒートマンの頭部の箱をぽんぽんと撫でた。
メンテナンスの終了を告げられたのに礼を言い、ヒートマンはうーんとのびをする。
そのままころりと転がった。
「火力制御装置の配線が一部切れてた。もう次の任務からは思う存分火力あげていーぞ」
「えー、ハイまであげるのだるい」
「そうかそうか、直した俺の労力を返せ」
「やだー、てか無理。でもありがとね」
「おう」
もうメンテナンスは終わったのにころころと台で転がるヒートマンと他愛無い
かけあいをしながら、フラッシュマンががちゃがちゃと道具を片付ける。
片付けながら、にしても、とフラッシュマンが口を開いた。
「お前もいー加減簡単なのから覚えろよ、メンテ」
「面倒臭いよー、しかも僕飽き性だから」
「だから、じゃねーよ」
「しかも僕の装甲、防火用も兼ねてるからフラッシュみたいに視界広くないし」
「あーそれはあるなー」
「じゃ、そんなワケで」
「納得いかん」
「まぁまぁ」
憮然と言うフラッシュマンに、ヒートマンがどうどうとゆるく手をかざした。
のんびりしたその動作にため息を吐きながら、フラッシュマンはやれやれと連番の弟機体に向き直る。
「大体お前らな、部下らが回収にカバー入れねえガチの最前線多いんだから、
 メタルだけがメンテ要員じゃカバーしきれないだろ。鳩の馬鹿野郎は流石に
 無理だとしても、末端の痛覚遮断と必要配線の接続くらい覚えろ」
「んー、メタルは僕らみたいに前線型っていうか、オールマイティ型じゃん。
 それに同タイプでフラッシュもいるし、そんなに目くじらたてなくてもなー。
 ていうかクラッシュだけ贔屓ってのもどうなの。ずるいずるい。異義あり」
のらりくらりと逃れる連番機をじろりと見やり、フラッシュマンがヒートマンの
箱型の装甲の上部位をぱたんと閉じてやる。「なにすんのさ」とヒートマンが
のんびり抗議するが、しかし特に抵抗しない。
「あのな、いつもいつもメタルや俺がパーティにいると思うなよ」
「そりゃそーなんだけどさぁ…」
「しかもクラッシュの馬鹿にお前内部触られたいか」
「謹んでお断わりします」
「だったら贔屓云々言うなや」
よいしょと装甲を開けながら、ヒートマンが、うー、と唸る。
「……フラッシュって心配性だよねえ、メタルと違った感じで」
「あれは過保護。俺は違う。ちったぁ危機感もて。優勢とオゴリやら油断はちげーんだよ」
「ふぅん?」
いまいち分かってないのか、ヒートマンが首を傾げた。その様子に、少し間をおいて
装甲をフラッシュマンがまたぱたんと閉じた。
ちょっとー暗いんだけどー。と、文句を言うようで面白がっているヒートマンと、
くつくつ笑うフラッシュマンの声がラボの壁に響いていた。




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