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□勝手3
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「今度という今度は俺は悪くないぞ」
「悪い悪くないの話じゃなくてさー」
片方はどっかりと、片方はもだもだと転がりながら、ソファに座ってクイックマンとヒートマンがE缶を傾けていた。
二機はオフなのをいいことに、リビングでだらだらと会話に興じている。
話題は、やはりフラッシュマンについてだった。
「今回の、一体何が発端なのかって聞いただけじゃん」
「だぁから、言ったろ。分からん。あいつが妙に俺にメンテ進めるくせに、あいつ自体は
 調子悪そうなくせにメンテ受けないから不思議に思ったんだ。で、心配したら
 何か知らんが切れられて、腹立ったからぶん殴った。そしたら引き籠もった。俺は悪くない」
クイックマンの説明に、ふむ、とヒートマンが鼻を鳴らす。一つだけ力強く言えた。
「何回聞いても益々もって意味が分からないや」
「俺だってわかんねーよ」
むす、と拗ねたように言いながら、クイックマンがE缶をあおる。
ヒートマンがころりと寝返りを打った。クッションが一つ床に落ちる。
「あれ? ていうかそもそもフラッシュがクイックにメンテ勧めてたのは何でなの?
 前回って確か無傷じゃなかった?」
「あー。んー…。いやな、どうも任務先で口論になったらしくてな」
「君らバカだよねぶっちゃけ」
「うっせー」
ちょっと気にしてたのか、クイックマンがまたむすっと答えた。それにやれやれと思い、
よっこいしょとヒートマンが機体を起こした。赤い兄に向き直る。
「で、何で口論になったの?」
「あいつの事前用意したファイル、ちゃんと見てなくて。侵入経路と脱出経路と
 監視カメラ位置くらいは見たんだが、あとはあいつがいるからいいかなって思って。
 んでそしたらまぁ要は、俺のせいで侵入がばれた」
「うーわ最低」
棒読みで言えば、流石に気まずいらしくクイックマンはちょっと固まった。
「…そんで、まぁ喧嘩になって、ハッキングくらいで偉そうにすんな的なことを言って
 俺がハッキングしたら逆に意識取られて、んでフラッシュに助けられたらしい」
「あれ待って、何でさっきから客観的に言ってんの?」
「いや、俺その辺のメモリ飛んでてよ。侵入時から事が終わるまで抜けてて。これはハゲから聞いた話」
その言葉に、ヒートマンはきょとんと兄を見て、そして深々と息を吐いた。
「っはー…使えない」
「うるせーっての! つか関係ないだろこれ!!」
「フラッシュがおかしくなる直前の任務だよ? 要因が大いにある可能性大だよ。
 なのに肝心の同行者のメモリないとかまじないわー」
「……!」
七弟の言葉に、クイックマンは図星からくる気恥ずかしさも不機嫌さも消して、少し不安そうに七弟を見た。
「……やっぱ、あの任務が影響してんのか…?」
「分かんないから、可能性あるっつってんでしょ。……ぶん殴った割に、心配してんだね」
ふふ、とヒートマンが意地悪く笑うと、クイックマンは違うと噛み付く。
「う、うるせーってんだ!俺はまだ許したわけじゃ…!」
「いやぁ、あれは心配したくもなるからいいと思うよ」
はいはい、といなし、ヒートマンは取り敢えず話を纏めようとプロセッサを働かせる。
─────しかしそこに、一本の通信が飛び込んできた。


『兄ちゃんたち、すぐに倉庫前に来て』


「!?」
「……何だ…!?」
端的な通信。送り主はウッドマンだった。
恐らく本基地に待機してる全機に送られただろうそれ。
その短い文から嫌な予感がして、ヒートマンは珍しく素早く立ち上がった。
赤い手を掴む。
「ヒート!?」
「ほら行くよ! ウッドが呼んでるの、来たでしょ!?」
「お、俺は別に…!」
「いいから!」
有無を言わさず、ヒートマンはクイックマンを引っ張った。行く先がどこかなんて野暮な会話はしない。
前方に、ラボから出てきたらしいもう一体の赤と青を見つけて、後に従った。





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