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□勝手1
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フラッシュマンの機体に赤い腕を回し、クイックマンが青い機体を持ち上げる。
フラッシュマンが身を預け安定した場所を探すよう機体を捩った。
共に走るよりこの方がずっと機動性も速度も到達時間も合理的なため、ペア任務時、
クイックマンはよく仲間を抱えて走っていた。
今回も、移動に無駄な時間を割くよりもこの方が手っ取り早いためこうするのだが
機体格が似通っているため下手をすると振り落としてしまう。
そして、そこそこ安定感をえた頃、クイックマンは思い切り強く地面を蹴った。
木の枝があたるすれすれを軽やかに行きながら、風圧もものともせずにクイックマンが進む。
月が出ている夜のため目立たないよう外套を羽織っているが、それでも額の飾りは
隠すことが出来ないため、またきらりと時折月光を反射した。
ばたばたと外套がはためく音が、あとからついてくる。
ジョイントで衝撃を殺しているのだろう、たん、たん、と音を出来るだけ立てないよう走っていた。
そして施設の入り口が正面に視認できる距離に近づいた頃、クイックマンがブーメランを投げる。
弧を描くそれは、施設のエントランス上部に小さく備えられている監視カメラのコードを切り裂いた。
一瞬固まり、しゅう、とカメラがこうべを垂れるように俯く。戻ってくる武器を手に取り、
高く跳躍してその勢いを殺さないまま、クイックマンが上から下にと鋭く振り下ろした。
エントランス前に立っていた警備ロボットが、ずるりと二つに割れる。
それと同時、クイックマンの爪先が音もなく地面に降り立った。
すとん、とクイックマンの腕からフラッシュマンも降りる。
「お見事」
呟いた頃には、クイックマンはエントランスホール内の警備ロボットも片付けたあとだった。
「ふん、このくらい……って何やってんだハゲ」
得意げに答えかけ、しかし後ろから聞こえた声にクイックマンが後ろを振り返る。
フラッシュマンはまだエントランスの外、倒れた警備ロボットを何やら弄っていた。
「ここはちょいと特殊なセンサー敷いてるらしくてな。奥に行くためのとこには
 全部仕込まれてる。この施設はその日出入りするロボット全員にその日限りの
 キーコードを送ってんだとよ。施設の敷地外に出れば自動消滅。日替わりでランダムに
 組まれるから先に用意が出来なかった。ちょっと今こいつから貰うからまってろ」
「どこに使うんだそれ」
「その辺、奥に続く廊下前の壁のどっかに、埋め込まれて模様と同化してる感じの
 黒い小さなパネルがねーか」
「え? それってこれじゃね?」
「あー、ハイハイそーかもな。触るなよ、当たりかもしれねーから」
「え?」
「え?」
上がった疑問の声に思わず同じ音を返し顔を上げると、フラッシュマンの視線の先、
クイックマンの指先が黒いパネルに触れていた。
小さな四角いそれに、ぱ、ぱ、と何やら文字が走り、赤い光が一度瞬き、
───そしてぷつんと反応しなくなる。

「あ」
「あ」

一瞬の沈黙のあと、けたたましく警報が鳴り始めた。




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