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□勝手1
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・オリジナルの悪役出現




勝手 1





木々に囲まれた中、夜闇に目立たない濃い茶色の外套を纏ったロボットが、二体降り立つ。
風の殆ど無い夜、ざり、と地面を踏みしめる音が大きく聞こえた。
月光に、一瞬きらりと特徴的な額飾りが光を返す。赤い機体色が外套の隙間から覗いた。
もう一体は目深にフードをかぶり、前を行く赤い機体の背後をついて歩く。
少しだけ開けた場所につくと、二体は足を止めて目当てのものへと顔を向けた。
「さって、仕事するか」
んー、と赤い機体───クイックマンが機体をのばす。昂揚感で今にも最高
スピードで駆け出しそうな楽しそうな様子に、フードをかぶった機体、フラッシュマンが
待ったをかけるように四兄を引き止めた。
乗ってきた飛空艇に待機座標を指示しながら、ばさりとフードをとる。
今回は、クイックマンとフラッシュマンの二人で就くペア任務だった。
「おい待て、てめえ今回何やるか分かってんのか」
「お前と組むときの俺の仕事ってお前の護衛しかねーじゃん、ボケたか?」
「殺すぞ。てか役割はそーだがよ、そーじゃなくてよ、何が目的でここに何しに来たのかってことだ」
「情報奪取。ここってあれだろ、ロボットの心理だとかの研究やってるとこ」
「当たり。もう一つ、きな臭いっつーか妙なこともやってるトコだ。それは表ざたにゃなってねーけどな」
カシカシと右腕をハンドから武器形態にシフトさせながら、フラッシュマンが事もなげに言う。
それに首を傾げ、クイックマンが青い色を見やった。
「妙なこと?」
「ロボットの人格収集やってるってよ」
「人格収集? 普通に違法じゃね?」
「てめえ、その台詞俺等が言うことか?」
「それもそーだな。けどそんな性格悪いことはしてないぜ」
「まぁな。俺たちのやってることは健全な世界征服ですとも」
口端をあげて歯を見せて笑うクイックマンに、フラッシュマンは肩を竦めて同意する。
「にしても何でそんなもん集めんだ?」
「ロボットが性格を個々に形成してる昨今、ロボット心理と人間の心理の違いの研究は
 地味にスポット浴びてる分野だからな。こういうのは数がモノ言う。だから
 手っ取り早く掻き集めてんだろ。人は集めんのに面倒があるが、ロボットだと
 気にしなくていいってことだろ」
淡々と言うフラッシュマンに、クイックマンが気分悪そうに顔をしかめた。
目標の施設を眺め、チッと舌を打つ。
「胸クソ悪ィな」
「あー、うん、ていうか、あのさ、つまりてめえ、やっぱり任務前に俺がやった
 ファイル開いてもないわけ?」
今言った情報、全部入ってんですけど。
腕を組み、指先でとんとんと二の腕を叩きながらフラッシュマンが頬を引きつらせた。
それをぽかんと見ながら、クイックマンがまた首を傾げる。ありありと?マークを
浮かべる様子に、フラッシュマンは任務前だというのに酷い脱力感に襲われた。
「貰ったっけそんなの」
「死ねばいいのに」
「ウイルスと間違われてファイアウォール引っ掛かったんじゃね」
「死ねばいいのに」
「で、まだ行かないのか」
「死ねばいいのに」
「返事に使うなしつこいな!」
「ハイハイ、ったく。じゃあ行きましょうかねぇ」
溜め息混じりに、フラッシュマンがゴーサインを出す。漸くのそれに、クイックマンが
回路を走る昂揚感に爪先で地面を蹴った。




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