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「……なるほどな」
体格で言えば兄弟たちのなかで中くらいの長兄が、小柄な弟ならまだしも、同格、
または大柄な弟を抱える様子はとてもシュールだ、とエアーマンは思う。
何より、そこまで出力はあるまいに。
頭が切れるブラコンの長兄にやれやれ、とため息を吐いた。
そこに。


「何の話だい?」


「っっっっ!!?」
メタルマンが会話に加わってきた。
突然のことに五人とも内心飛び上がる。先程までの会話内容が内容なので、全員が黙り込んだ。
「? どうしたんだお前たち」
「…い、いや、何でもないぜ?」
「そうそう、びっくりしただけ」
フラッシュマンとウッドマンが適当に取り繕う。
「お前こそどうしたんだ、メタル」
「ん? いや、博士を手伝ってラボにいたんだが手伝い終わったんでな」
おまえたちの顔を見に来たんだ、と次男の質問に答えながら朗らかにメタルマンは告げる。

ほうほう、顔を見にですか。

やばい。

くるぞ、あの台詞が。

瞬間、この兄の肩、もとい武器を弱点とする三人が構える。
「おいウッド、他のカメラも説明しとくから部屋来いよ、植物の写真撮るんだろ?
 バブル兄貴も、もうすぐ為替市場のニュースじゃねえ?」
弱点の兄弟に呼び掛け、フラッシュマンがすかさず防衛線をはった。
「あ、うん、ありがとう」
「もうそんな時間か、僕も部屋に戻るよ」
ウッドマンとバブルマンがこれ幸いにと逃れようと席を立つ。
が。

「そうなのか。ならバブル、部屋までお兄ちゃんが抱っこしてあげよう」

裏目に出てしまい、恐れていた台詞が出てきてしまった。
「っ…、や、このくらい歩けるからいいよ、メタル兄さん」
「遠慮はいらないぞ、というか、お兄ちゃんは三人とも抱っこしてあげたい」
「物理的に無理だろうが」
「そんなことないぞ、何なら実践を」
にじり寄る兄に、ああ、と三人が内心頭を抱える。
可愛がってくれるのは結構なんです。如何せんその方向が妙で、しかもこのメンバーは
ダメージ食うんです。分かってください。
切なる弟の願い虚しく、ニコニコとにじり寄る長兄に、三人が青ざめた。
すると、「すまんがメタル」とエアーマンがメタルマンに声をかける。
「博士の手伝いとはもしかして次の任務の準備か?」
出撃は誰がやるんだ?という次男の再びの質問に、メタルマンが意識をとられた。
「ああ、アタリ。出撃は…」
こちらに向いて説明を始めたメタルマンに気付かれないよう、エアーマンは目線で三人に訴える。
(今のうちに、早く行け)

「………!!」
次兄のとっさのフォローに感謝しつつ、三人は広間から逃げ出した。



「…………っあああ! 三人がいない!!」
エアーマンに説明をおえたあと、ふと気配が消えたことにメタルマンが後ろを見やると
誰もいなくなっていた。弟たちに逃げられたことに気付き、悲しそうに声を上げる。
「なぜだ! あの三人はなぜいつも抱っこさせてくれない!お兄ちゃんじゃ
 どうしてダメなんだ!!」
「………」
嘆く長兄はすこし可哀相だが、その理由は単純だと、頭が切れるのになぜ
気付かないのだろうとエアーマンもヒートマンも考える。
「しかたない。じゃあエアー、お兄ちゃんが」
「断る」

ダメな理由? ごく単純。
嫌いなわけじゃないけれど。

「だって、痛いんだもんねぇ」
「痛いよね、確かに」
「痛えよなぁ」


痛いんです。


おわり

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