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何でダメなんだ!!

響きわたる悲痛な叫び。可哀相な気もするけれど、ダメな理由はごく単純。



痛いんです



「ねえ、エアー、だっこ」
「………」
ヒートマンのいつもの声にエアーマンは無言で抱き上げ、膝に乗せてやる。
ヒートマンは、兄弟機の膝にのるのが好きだ。
お気に入りは大柄な体格のエアーマン、面倒見のよい一つ上の兄の
フラッシュマン、優しい檜の香りがする弟のウッドマンの膝の上だった。
クラッシュマンはおやつにクラッシュボムをくれる代わりに抱っこはしてくれない、と言うかできない。
メタルマンもだっこ要員なのだが、メタルはちょっとうざい、とはヒートマンの言葉。
クイックマンはヒートマンを抱えたままトップスピードで走り回ったことがあり、
ヒートマンはもうクイックは二度とやだ、と心に誓っている。
バブルマンは陸上移動が不得意なため抱っことか言ってる場合じゃない。
寧ろ抱えられる側だ。

そんな兄弟の膝事情。

抱えられる必要があるのは基本二人だけ。
ご不満なのは、ただ一人。
「…そういえば、三人って、メタルに抱きつかれたらダメージ受けちゃうね」
エアーマンの膝の上で、ヒートマンは他の兄弟に声をかけた。
カメラの説明をしているフラッシュマンと、その兄からの説明を聞いている
ウッドマン、音楽を聞いているバブルマンだ。
「……弱点武器だからな、俺らの」
「なのに抱きついてくるよね。わざとなのかなぁ、メタル兄さん」
フラッシュマンとバブルマンが答える。
「少しは考えてほしいぜまったく」
「ブラコンもたいがいにしてほしいよね、メタル兄さんも。今度ウッド削ったら
 ヒートに燃やされるんじゃない?」
「あ、あの兄ちゃんたち…」
「お前も削られてダメージ食うだろ、ウッド」
メタルマン本人がこの場にいないのをいいことに、言いたい放題だった。
「特に困るのは、負傷したときとか。僕が歩けない距離の時にエアー兄さんも
 クイックもフラッシュもウッドもいないとき」
「ああ、俺も負傷したとき危ないな。っつーか、ヒートが出来てからか、奴のあれは?」
「……? あれ、とはなんだ、フラッシュ?」
黙ってあまりよろしくない内容の長兄談議を聞いていたエアーマンが、フラッシュマンの
言葉を疑問に思いふと訪ねる。
「兄貴も言われたことあると思うぜ、多分」
「僕が出来てからあれって、僕が出来てからあーなの、メタルは?」
「んー…正確にはより強くなった、ってところかな」
「……?? 何の話だ?」
訳が分からない様子のエアーマンに、膝のうえのヒートマンまで視線を向け、四人が口をそろえる。

「お兄ちゃんが抱っこしてあげよう」

言われた言葉に、エアーマンが黙った。
「…………………」
言う。確かに言う、あの兄は。
この自分にも、言ったことが確かにある。
抱えられることを好む七男が出来てから、この言動は確かに回数を増した気がする。
固まった次兄の様子に、四人はああ、と察する。
「やっぱり、エアー兄ちゃんも言われたことあるんだね」
「さすがに俺らほどじゃねえみてえだけどな、すぐ思い当たらないなら」
「弱点武器じゃない兄弟だけ抱っこしてればいいのに」
「いや、つーか、しなくていいから。鬱陶しい」
「えー僕の立場はー?」
「お前とバブル兄貴はいいんだよ、別に。お前は小さいし、バブル兄貴は不可抗力」
「小さいって何さーフラッシュのハゲ!」
「体格の話だ、誰がハゲだ!」



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