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唸るドリル。沸き立つオイル。抉れるコンクリ。崩れるブロック。
腕を振り上げると、倣うように舞い上がるアスファルト。
ああ全く、どうしようもない。






また一つ、爆煙があがる。
ほぼ同時に響き渡る轟音が、ビリビリと内部回路とコアを震わせた。
間接を軋ませ、配線をわななかせ、動力炉が熱を上げる。
その音は古来から戦いの場の空気を盛り上げるのに用いられているのに似ているが、
しかし機械の身に意味などないはずだった。しかしそれでも。
「ぃいいィィイ音だぜぇ!!」
ヒャハハハハ!とけたたましく笑いながら、青い機体、フラッシュマンがバスターを四方へ放つ。
当てずっぽうに放っているようで、しかし物陰に隠れて機会を伺う敵数体の頭部が吹っ飛んだ。
だが、もっと敵がいる肝心の前方にはあまりその精度は発揮されておらず、
近いはずのロボット達にはあたらない。
ばらばらと放たれるそれをかわし、打ち抜かれたロボット達の穴を埋めるように、
すぐに増援が青い色へと襲い掛かる。
けたけたと不気味に笑いながら無防備に突っ込む青を破壊しようと銃口が向けられるが
しかし、その彼らのアイセンサーが、青の背後から打ち込まれる爆弾を捕らえた。
そしてまるでタイミングをはかったように、───つい先程まで考えなしに突っ込んできて
狂ったように笑っていたのが嘘のように冷たく笑い───それらが着弾する前に、
青い機体がひらりと後ろへ跳躍する。
放たれたそれらが地面に数発着弾すると、爆発までの僅かの間に、青い色が背後にいた
大柄な朱色の影へと滑り込んだ。
次の瞬間、またも轟音が辺りを揺らし、青い色に差し迫っていたロボット達が粉微塵に吹っ飛ぶ。
強烈な爆煙が朱色の機体───クラッシュマン───に至近距離で吹き付けられた。
小さくない瓦礫や石も紛れるそれをものともせぬまま、クラッシュマンは前を見据えたまま口を開いた。
「出過ぎるな、フラッシュ」
「トロいんだよ、クラッシュ」
クラッシュマンを盾にして爆発をしのぎつつ、フラッシュマンは片方の口端を釣り上げる。
─────彼らはとある工場の破壊活動に来ていた。
粗方の用は済んで、しかししつこい残党の群れと工場から少しはずれた滑走路で
一戦交えているところだった。決して劣性ではないが、しかし彼らの背後には崖。そしてその下は、海。
山岳地帯を刳り貫いた作りのせいか、他は岩山が連なっていて戦いやすい場所が自然とそこになったのだ。
そのせいか、はた目には随分と危機感を感じさせる光景だった。
件の工場からは炎と黒煙が上がり、三割ほど崩れた外壁が、もう施設としては役に立たないことを知らせる。





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