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さて。

そう回路で言いながら、エアーマンは目の前の光景に腕を組んだ。
腕を組んだとて、別に何かよからぬ物を見て不機嫌になったわけでも、何かに対して
怒っているわけでも困っているわけでもない。
ただ、どうしたものかと少し考えこんでの体勢だった。
彼が立っているのは、森に面した基地のテラス。
心地よい風が吹いているが、博士などは季節的に少しの肌寒さを感じるくらいの気温だった。
その中でこれか。否、それはあまり気に留めないべきか。否、そういう問題ではないな。
つらつらと考えるが、「ふむ」と排気に近い声を零し、考えてもどうにもならないと結論を出す。

エアーマンの目の前。テラスで眠るフラッシュマンがいた。

よっこいしょ。
そんな声が聞こえそうなほどのゆったりとした動作で、決して細くも小柄でもない
フラッシュマンを易々と抱えあげた。
普段エアーマンは、フラッシュマンがどこで眠ろうとあまり気に留めない。
廊下や外などあまりにとんでもない所で眠ってなければ、────たまに森で
眠っているらしいが、今はそれは置いておいて────基本的にそのまま寝かせていた。
ただ、今日は場所がテラスであることが気に掛かる要因となった。
今日は日が落ちると一雨来そうな空気だったのだ。
さすがに濡れるのを放置する気はない。
腕に収めた機体はひんやりと冷えており、その温度差を感知したのか、もぞもぞと
収まりのいい場所を探してこてりと頭をエアーマンにもたせかけた。
普段ならバランサーと装甲センサーが他機を感知した時点で起きようものだが、
余程深くから休んでるのだろう、意識は浮上しないらしい。
気持ち機体を丸め、擦り寄るような姿ははた目には甘えているようにも見える。
温もりに安心したように、鼻から抜けるような排気をフラッシュマンはもらした。

さて。

またエアーマンは考える。
今度はどこに連れていくかだ。他の機体なら個々の部屋に連れていき寝かせるのだが、
如何せんこのもう一体の青い機体は部屋のロックが独自で、本人以外のアクセスを一切うけつけない。
特に苦言を呈したことはなかったのだが、こういうときに厄介だなとエアーマンは思う。
と言うか、何故そんな難攻不落の部屋にしてるのか疑問までわいた。
ラボのメンテナンス台も考えたが、すぐに却下する。
五弟のクラッシュマンが少し前の任務で暴走し破損したため、その修理中だったからだ。
大変騒がしい中に放り込むのも酷だろう。
今は待機中のメンバーも少ないのでリビングでも構わないのだが、眠るのに
些細なことで騒がしくなりがちのリビングは不適かとも考えられる。
次々候補をあげては却下し、最後に残った選択肢に「仕方ない」とエアーマンは歩き始めた。
出来るだけ足音が立たないよう、無駄に振動を与えないようゆっくり歩く。
本当なら、フラッシュマン自身を叩き起こせばいいだけなのだが、どうにも六弟は
休息が不規則になりがちだった。なので、こうして眠る姿は休めるときに休んでいる証と
エアーマンは捕らえているので、出来るだけ眠らせてやりたいと考えている。
情報処理に秀でた面がある分、本来ならデフラグも充分すべきなのだ。




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