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□祈り
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「………何だそれは……」
「メタル兄さんは、僕らに対して過保護だからねぇ」
七男の説明にエアーマンは呆れたような声をあげ、その次兄に抱えられている
バブルマンはどこか楽しそうに、そして他人事のようにのんびりと呟いた。
原因は意地っ張りとブラコン気味の心配性と分かって、何の危惧もいらない
現実にエアーマンは小さくため息を吐く。
そして、未だぎゃあぎゃあと喧しい二人に視線を向けた。
座っていたフラッシュマンは今や立ち上がってコードを引っぱりながら、休めと
しつこい長兄を見下ろしながら怒鳴っていた。その六弟に、メタルマンは負けじと食い下がる。
「終わるまで止めねぇっつってっだろーがしつけぇぞ!」
「でもフラッシュ! これ以上起動してたらお前のプロセッサが負荷で…」
「この程度で音を上げるような柔な造りなんぞしちゃいねぇ!」
「そんなことを言わずに、こっちへきて少し横になったらどうなんだい、
 そんなに疲れた顔して、見ていられない、我慢できないよ!」
「煩えこのブラコン野郎!!」
「そんなに怒鳴らないで、苛々するならやっぱりもう寝ないと!!」
「だああああっ! 誰のせいだ!!」
より一層声を荒げるフラッシュマンに、メタルマンが埒があかない、こんなに
怒っていては会話など成立しない、と眉をひそめる。
普段口は悪いが基本冷静なフラッシュマンが怒鳴るのは、それだけでもう機体に
負荷が強くかかりストレスを受けていることを意味していた。そのことから、
会話が成立しない以上にメタルマンは弟機体への心配を益々強める。
フラッシュマンは基地のセキュリティのバージョンアップのためにずっと
システムとリンクしたまま、休みなしにプログラムを組み続けているのだ。
大切な仕事だと理解しているが、兄としてメタルマンは弟機体がこれ以上休み
なしで稼働し続けることを見過ごす訳には行かなかった。そして、何を思ったか
メタルマンは青い弟機体に手を伸ばし、その名前を呼ぶ。
「……フラッシュ?」

「っせえってんだよほっとけクソ野郎!! てめぇいい加減に───」

しやがれ、と続こうとしたフラッシュマンの一際大きい苛々とした怒鳴り声は、
しかし突然途中で止まった。
何故なら、突然メタルマンが他の全員が見てる中で、怒鳴るフラッシュマンの
頭部を強く掴み引き寄せ────いきなり口付けたからだ。


「っ!!??」


メタルマンが、フラッシュマンとキスをしている。
そのあまりにも唐突すぎる光景に、メンテナンス中のウッドマンも周りにいた
ヒートマンもクラッシュマンも、エアーマンも彼の腕に抱えられているバブルマンも、
彼らの父であるワイリーすらも驚きに目を見開き、タイムストッパーは作動して
などいないはずなのにラボ内の空気は機械類の駆動音を残して完全に凍り付いた。

「…………………………」

ワイリーもその場にいるナンバーズも固まったまま、微動だにせず唇を───
と言うか、唇とマスクを───重ねている二機体を言葉もなく見つめる。




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