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□祈り
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祈り


「……ねぇ、まだかい?」
「……あと少し」
「さっきもそう言ったじゃないか、いつまで続ける気だい?」
「…まだもう少しだ……」
「………ねえ、ダメだ、もう我慢できないよ、もう止めて、こっちへおいで?」
「…待て、まだ……」
「ダメ、待たない。もう無理だよ、我慢の限界だ」
「…よせよ……まだだっつってんだろ……」
「ダメだって、もう待てないんだ、我慢できない。お願いだ、さぁ早くおいで」
「………」
「さぁ…」
「………」
「フラッシュ…!」
「…………………」
「フラッシュ!」
「…………………………」
「フラッシュってば!」



「っあ"ぁぁああああああうるっせぇぇえええええ!!!!」



「あーあ、とうとう切れた…」
ラボ内に響いた六兄の絶叫に、ヒートマンはぽつりと呟いた。
ヒートマンの隣のクラッシュマンは、突然のすぐ下の弟の声に驚いて目を
瞬かせている。二人の傍にあるメンテナンス台の上には末の弟機体のウッドマンが
横たわり、そのすぐ傍にはワイリーが立っていた。ウッドマンもワイリーも、
つい先ほど上がったフラッシュマンの絶叫に目を丸くしていた。


基地内のワイリーのラボの中、ナンバーズの創造主であるワイリーが、末の
機体であるウッドマンのメンテナンスを行っていた。
仲のよい弟機体の傍にいたいヒートマンが傍に控え、そのヒートマンと一緒に
ウッドマンのメンテナンスを眺めていた五男のクラッシュマンがいる。
その彼らの視線の先には、深い紅と鋭利な銀が特徴的な長男のメタルマンと
ラボ内の視線を集めた原因の絶叫の主である六男のフラッシュマンがいた。
彼らはラボ内の視線が自分達に集まっていることなど構っていられないかの
ように、二人で何やら大声で喧しく言い合いを始めた。
フラッシュマンは今何やら作業中らしく、その機体の青い色を包むようにコードが
絡み付き、機械に抱かれるようにして椅子に座っていた。その体勢から怒鳴り
声を上げて自身を睨み付けるフラッシュマンに、傍に立っているメタルマンは
心配そうな、しかし譲らない視線を弟に向けている。
いつもは戯れ程度の応酬をするが、お互い比較的穏やかに接していたはずの
二人が声を荒げ合うという珍しい図に、周りの者は半ば茫然と遠巻きに見ていた。
白を基調としているが雑然としたラボの中に、赤と青の機体の言い合いが響き渡る。

「随分、騒がしいな」

そこに、バブルマンを腕に抱えたエアーマンがラボに顔を出した。
エアーマンは少し気難しげな表情を浮かべ、バブルマンは面白そうにしている。
「あ、エアーにバブル」
訪れた兄たちを見て、そっか次、バブルの脚部メンテだったっけか、とヒートマンが
呟いた。そんな七男に、エアーマンが少し眉をひそめながら問い掛ける。
「一体何をあんなに怒鳴っているんだ、あいつらは」
「んー、フラッシュがずっと仕事してて仕上げるまで寝ないって言ってたん
 だけど、メタルがもう止めろ寝ろ休めって何回も何回も何回も言ってたら
 さっき遂にフラッシュが切れた」
次兄の問いに、ヒートマンは簡単に、しかし分かりやすい説明を淡々と述べた。



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