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□暇つぶし
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ワイリー基地の広間の中。
青い機体色を持った二機体、エアーマンとフラッシュマンが今日は任務も特に
ないため、二人でエアーマンの趣味であるメンコをして余暇を過ごしていた。
相手の手札を、自分の手札を叩きつけて起こした衝撃や風で覆す事で優劣を競う
というレトロな遊びを、竜巻を作り出す性能ゆえかエアーマンは好み、趣味としていた。
集めたメンコは今では結構な数を誇っており、エアーマンはときたまこうして
オフの日に、トレーニングや自身の整備などしてもなお時間が余る場合の余暇を
過ごすときに兄弟機と───燃やしたり破りそうな兄弟機を除いて───使っている。
そして、今日もまたそれを使って二人で勝負し、なかなか決着がつかず白熱した
それはエアーマンが勝利し、フラッシュマンが敗北したことで先程やっと終わりを迎えた。


メンコを仕舞い終え、エアーマンは未だ不貞腐れる自分と同じ青い機体色を持つ
弟を見下ろした。ソファを陣取る憮然とした態度や悔しげに歪められた悪人面が
何とも近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、そうなる理由が理由だけに、
普段他の兄弟機の面倒を見ることが多いこの機体が弟機体である事を再確認して
いるようだ、とエアーマンは小さく笑う。兄貴肌な割に、勝負事でむきになる
弟機体の姿は存外どこか幼い。
そう考えながら、エアーマンは四つ下の弟に確認するように声をかけた。
「とにかく、勝ちは勝ちだ。約束を覚えているか、フラッシュ?」
からかうようなエアーマンの言葉に、フラッシュマン悔しそうに次兄をじろりと
半目で見上げ、不本意でたまらないといった声を返す。
「ちっ、わーってるよ、ちゃんと覚えてら」
「ならいい、あまり不貞腐れているようだから忘れたと言いだすかと思ったぞ」
「んなことすっかよ、生憎、プロセッサは優秀なんでね」
大体、言い出したのは残念ながら俺だし?
次兄の皮肉に答えながら、フラッシュマンは観念したように次兄を見やり、
やれやれと立ち上がる。
「負けは負けだ、そんくらい弁えてるっつーの」
そんじゃ、取ってくるからちょっと待ってな、と言って、フラッシュマンは
広間から一旦自室へと消えていった。
立ち去る弟機体の後ろ姿を眺めながら、あの弟機体がむきになったのも、負けて
悔しがった理由もまぁ分からなくはない、とエアーマンは回路の中で呟く。今日
やったメンコはいつもと違い、ただ余暇を過ごすためだけにやったわけでは
ないのだから。いつになく白熱したのも、フラッシュマンが負けたことで酷く
悔しがったのも訳がある。とはいえ、仮に自分が負けたとしても流石にああも
不貞腐れはしないだろうと弟の先程の悔しそうな顔をメモリに反芻しながら、
しかしむきになったのは自分も同じだ、とエアーマンは自身に対して苦笑いを
浮かべた。自分もまだまだ鍛練が足らない、と思いながらワイリーナンバーズの
次男は、先程まで弟が座っていたソファに身を沈め、その弟が自室から戻って
くるのを待つことにした。




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