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□聖誕祭
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「それなーに、フラッシュ?」
一つ上の兄機体の傍に、ヒートマンが走りよって不思議そうに問い掛けた。
兄がずっと抱えており、今し方父の手にわたったそれを下から眺める。
「博士へのクリスマスプレゼントだよ、任務で掻っ払ってきた新開発の合金」
「ふぅん、くり…す、ねー、博士も言ってたけど、何なの、それ?」
たどたどしく復唱しながら、ヒートマンが不思議そうに兄機体に尋ねた。
どうやら父は、クリスマスだから兄弟機を朝早くから起こしたらしいが、それが
何たるかの説明をまだしていなかったらしい。聞き慣れない単語に七男が興味を抱く。
その一つ下の弟機体に、フラッシュマンが説明をし始めた。
「あん? 人間の宗教上の祭日の一つで、救世主が降誕した日のことだ、その
 前日祭が昨日で本祭が今日」
「へぇ、で、何でプレゼント?」
弟機体の質問にフラッシュマンが答えると、ヒートマンが更に質問を重ねる。
「そいつが生まれた祝いに贈り物送ったことから、クリスマスに贈り物送る
 習慣が人間にゃあるんだとよ。で、他にもプレゼントくれる奴がいて、
 クリスマスの祝いにゃ聖ニコラウスっつーじじいがガキどもにプレゼント
 配るんだと。俗に言うサンタクロースって奴。クリスマスたぁ、一年いい子に
 してりゃそのめでたい日にそのじじいからプレゼント貰えるっつーお伽話が
 あってな、今となっちゃ、まあ、ただのプレゼント送りあうイベントだ。
 そのじじいの元ネタはトルコにあるっつー説もあるが、そのじじいは
 フィンランドに住んでるってのが一般的」
以上でっす、と兄機体に一気に説明されて、しかしヒートマンがうーん、と唸る。
「なーんかよくわかんないけど、プレゼント貰えるってことはよく分かった!」
兄の説明を聞いていたのかいないのか、ヒートマンが楽しそうに自分なりに兄の話を纏めた。
そんな弟に呆れるでもなく、フラッシュマンはヒートマンを抱え上げる。
「はーいハイハイ、まぁ、そんなもんだ」
「ねえ、フラッシュ、僕には何かプレゼントしてくれないの?」
「俺はサンタじゃありませーん」
「むー、ケチ! 博士にはあるのに!」
「お黙り。ありゃ任務だったからだよ」
広間のドア近く、一つ上の兄機体と軽口を交わしあっていると、ふとヒートマンが父に顔を向けた。
「あれ、それで何で早起きなの、博士ー?」
七男の言葉を聞いたワイリーは、六男から渡された箱を抱えたまま、にやりと
楽しげに笑みを浮かべる。
「クリスマスは、家族で過ごすもんじゃからの」
その日くらい早起きするもんじゃ、と言いながら、ワイリーはいい加減立った
ままのドアの傍から広間の中へと足を進め、椅子に身を沈めた。
そして、受け取った箱の中身を取り出して、楽しそうにそれを眺めはじめる。
すると、次兄のエアーマンが、ドアの傍に立っているフラッシュマンを振り返った。
「お前たちも、いい加減こっちへきて座れ」
「ああ、へいへい」
その兄に声を返しながら、フラッシュマンがヒートマンを抱えたまま、父や
兄弟機たちの傍に歩み寄る。




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