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□聖誕祭
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見てられないから、手を貸そう。
形はどうあれ、それは確かな贈り物。



聖誕祭



夜が明け明るくなってきた頃に、ワイリーの基地にナンバーズの一人が任務から帰還した。
帰還した彼は片手に何やら箱を抱え、どうやら任務がうまくいったらしく、上機嫌に廊下を歩く。
まだ朝早い時間だが、手に入れたものを父の仕事場に運ぼうと、彼はラボへと
足を向けていた。これを手に入れるために赴いた任務だったのだから。
すると、廊下を歩くその彼の聴覚センサーに、聞き慣れた声が感知される。
「何やら楽しそうじゃの、フラッシュ? 遊びすぎるな、と言ったじゃろう」
声をかけられた機体、フラッシュマンが声の方を見ると、父であるワイリーが廊下に立っていた。
どうやら任務から帰還した彼を、指令を下した自らが出迎えたらしい。
その父に、フラッシュマンがにへらと笑いかける。
「いいじゃないッスか、折角イヴだったんだし?」
そこまで遊んでないッスよ、と言う息子が、しかし少々派手に任務をこなした
ことをワイリーは知っていた。
悪怯れなく言ってのける六番目の息子を、まるで待っていたかのようにそこに
立って、ワイリーはやれやれと微笑んだ。
「ほどほどにしてやれ、あれでは相手方が哀れじゃ」
「ちょっくらあちらさんに自爆してもらっただけッスよ。施設ごと起爆すりゃ
 楽なもんじゃないスか」
会話しながら二人で連れ立ち、しかしワイリーはラボではなく広間へと足を向ける。
その父に、フラッシュマンが不思議そうに問い掛けた。
「あれ、そっちッスか?」
「ああ、珍しく皆もう起きておる、お前も早くこい」
息子を振り返り声を返しながら、ワイリーが広間のドアを潜る。
「ふぇー、マジかよ」
早起きを嫌う三兄や七男までもう起動していると聞いて、意外そうにこぼしながら
フラッシュマンも父に続いた。
広間に入ると、父の言葉通り兄弟機が全員いた。父と六兄の姿を目にした
ヒートマンが嬉しそうに声をかける。
「お早よう博士ー、お帰りーフラッシュ」
「元気じゃな、ヒートは」
「よう、今日は早えのな、ヒート」
「今日は博士に起こされたの。用があるからって」
「おお、そうじゃ、フラッシュにはまだ言ってなかったの」
ヒートマンの言葉を聞いて、ワイリーは何かを思い出したように再度フラッシュマンを
振り返った。
「クリスマスおめでとう、フラッシュ。イヴにすまなんだな」
そして、ラボではなく広間に誘ったわけを──クリスマスの祝いの言葉を告げ、
ワイリーが息子に笑いかける。
その父に、フラッシュマンも楽しそうに笑みを返した。
「なーに、言ったじゃないスか、ちょうどいいって。メリークリスマス、博士。
 はい、これ、プレゼントッス」
自身もクリスマスの祝いの言葉を返し、次いで、今度は片頬を上げて悪戯な
笑みを浮かべながら、フラッシュマンは手に持っていた箱をワイリーに手渡した。
クリスマスプレゼントと称する、やたらと重みのある、任務の最重要目的。
その箱を受け取り、ワイリーもまた酷く悪戯な笑みを浮かべる。
「ふむ、これは嬉しいプレゼントじゃ、ご苦労じゃったな、フラッシュ」
息子と同じような笑みを浮かべながら、ワイリーが嬉しそうに息子を労る言葉をかけた。




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