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□賭け
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「何を勝手にだって?」
そこに、三人以外の声が背後から響く。緑の機体色が特徴的な三兄が広間にやってきた。
「何騒いでんの」
「ようバブル兄貴」
三兄を振り返り、フラッシュマンがバブルマンに声をかける。次いで、何かを思
いついたように片頬を上げ、皮肉な笑みを浮かべた。
「ちょうどいいわ。水ん中温いんだろ、ヒートぶっこんでくんね?」
バブルマンの部屋に隣接されているプールは水温が一定に保たれているため、
今は外気温より暖かい。そこに七男を入れてやれ、と一見優しいような、しかし
その実そうではない提案をフラッシュマンがする。
四つ下の弟機体が苦手とする水の中をわざと意地悪く提案する三つ下の弟機体に、
しかしバブルマンは顔色一つ変えずに声を返した。
「ヒートがメンテの羽目になったら、そのメンテも博士に怒られるのも、
 フラッシュがやってね」
「はっ、やなこった、ごめんだね」
「むぅ二人ともひどーい!」
「あんちゃんたち…」
「くく、冗談だよバカ」
怒るヒートマンとおろおろとするウッドマンに、フラッシュマンが悪戯に笑った。
「ていうか、何でみんなそんなに平気そうなのさー」
「お前の機体温が俺らよっかたけえから寒く感じてるだけだよ」
「確かにあったかいからねぇ、ヒートあんちゃんは。僕も特に寒くないよ」
「むぅう…ウッドまで…」「…………」
そんな会話を繰り広げる弟機体たちを眺めながら、ふむ、とバブルマンが考え込む。
その三兄に、ウッドマンが不思議そうに問い掛けた。
「? どうしたの、バブルあんちゃん?」
「ん、いや、今日はメタル兄さんもエアー兄さんも出撃でいないからさ、
 くっついてても危なくないよねと思って。そんな寒いなら、みんなでソファ座れば?」
長兄と次兄を引き合いに出したが、主に長兄のことを言っているだろう、と
ヒートマン以外の二人の弟機体がバブルマンの言葉に感想を抱いたが黙っていた。
長兄のブラコンぶりと肩のブレードは、弟機体たちのさり気ない悩みの種なのだ。
「フラッシュ、こっちおいでよ」
「あー、なるほど、みんなでくっついたらあったかいよね!」
考えてみたらそうだよねー、とヒートマンが嬉しそうに反応する。
しかし、来るように呼ばれたフラッシュマンは嫌そうに顔をしかめた。
「げ、俺ヤだぜ、バブル兄貴? 俺別に寒くねーし、大体、ヒートに冷てーから
 くんなっつわれんのが落ちだぜ」
「言わないよー。ねー、可愛い弟のためだと思ってよー、ケチー」
六兄の言葉に、ヒートマンがむう、とむくれる。
嫌がるフラッシュマンに、しかしバブルマンが平然と声を返した。
「クラッシュとはくっついて寝てたくせに」
「あれはあのバカが勝手にくっついてただけだよ」
三兄の言葉にフラッシュマンが切り返すが、そんな様子にヒートマンがさらに
むくれ、すぐ上の兄機体の嫌がる言葉を投げ掛け始める。
「フラッシュの鬼ー僕はダメなんて意地悪ーハゲー」
「だぁあれがハゲだ!!」
すると、案の定すぐに六兄は反応した。




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