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□賭け
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状況を読んで、予測をたてて。
当たり外れは、お楽しみ。



賭け



「寒い」
「そうか」
「さーむーいー」
「知るか」
「ねーさぁーむいってばああ!!」
「だあぁから何だっつーんだよ!!」
ウッドマンの膝の上で、ヒートマンが不満そうな声を上げる。
そのヒートマンに対し、一つ上の兄機体のフラッシュマンが怒鳴り声を返した。
基地内の広間の中で、014から016のナンバーを持つ三人が寛ぎ、オフの時間を
過ごしていたのだが、その広間の中に六男と七男の寛いでいるには相応しくない
不機嫌そうな声が響いている。
七男のヒートマンがひどく寒がっており、そのあまりのしつこさにとうとう
聞き流せなくなったフラッシュマンが声を返したらしい。
その六兄の返事など聞こえていないかのように、ヒートマンが再度口を開いた。
「寒くて間接の潤滑用のオイルの滑りが悪くなるーねー寒いー寒いよー」
先程から、七男のヒートマンがこのような調子でひたすらに、すぐ上とすぐ下の
兄弟機に寒さを訴えていたのだ。
そんな一つ下の弟機体に、フラッシュマンがいい加減呆れたように面倒臭げに声をかける。
「…んなこと俺が知るかってんだ、俺は別に寒かねーし、暖房機能は動いてるし
 くっついてるウッドはあったけぇだろーがよ。どうしろっつーんだ」
七男が今くっついている、ソファに座っている末弟のウッドマンは、他の兄弟機と
違い、唯一檜で出来ているため機体温がある程度一定で、他の兄弟機ほど外気温の影響を受けない。
そのため、少なくとも寒いと嘆く七男よりかは暖かい筈だ、とフラッシュマンは
思ったのだが、それに対し当の末弟が、向かいの一人がけ用の椅子に座っている
六兄の言葉を否定するように首を横に振った。
「ううん、僕よりヒートあんちゃんの方があったかいよ、フラッシュあんちゃん」
「あん? そーか、そりゃそーだな」
末弟の言葉を受け、フラッシュマンがきょとんとしたが、すぐにウッドマンの
言った意味を理解する。
ヒートマンは炎を武器とする機体のため、兄弟機の中でも機体温が高いのだ。
あまりにも寒い寒いと連発するのでうっかりしていた、とフラッシュマンが
自身の頭部に手をやる。
「でも少なくとも俺よりゃあったけぇだろ、お前は」
「うーん、多分ね」
「うー…うー…寒いよぉお」
「…しゃあねぇやっちゃな、クラッシュかクイックならあったけえんじゃねーの?」
くっついてこいや、とフラッシュマンがぼやいた。
未だ寒いと呟くヒートマンに、ならば、と暖かそうな兄機体たちの事を
フラッシュマンが提案するが、ヒートマンは六兄の言葉に嫌そうに首を横に振る。
「クラッシュはハンドに切り替えてくんなきゃヤダ。クイックは落ち着きないからイヤ」
「…さいですか…」
弟機体のマイペースな返事に、ならもう勝手にしろよ、と溜め息を吐き、
ソファに座っている二人と違い一人がけの椅子に腰掛けているフラッシュマンは
二人に向かって少し大げさに肩を竦めた。
確かに外は冷えるが、基地の中は暖房機能は動いているし、そんなに寒くはない
筈なのに、とフラッシュマンは思う。




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