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□声 (中編)
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地下におり、目当てのドアの前に立つ。
しゅん、と地下のラボのドアが開いた。
普段倉庫として使われれいるそこは、しかし明かりがついている。
中には、次兄のエアーマンと、目当ての片方のバブルマンがいた。
二人は何か台のようなもののそばに立っている。
ここにいたのか。
そう思い、半分ホッとしながら中に入る。背を向けている二人に話し掛けた。
「こんなところで何してるんだ、二人とも。バブル、探したぞ」
「っ!?」
とたん、エアーマンとバブルマンは弾かれたようにクラッシュマンを振り返った。
覗き込んでいた診察台の上の何かを隠すようにして、二人は突然の訪問者を見つめる。
「クラッシュ、何でここに!? お前メンテ中だろう!」
「だっ…だって、さっき起きたら俺、腕が無いのに何も覚えてないし、一緒に
 任務行ってたバブルとフラッシュがいないし、心配になって…」
自分が来たことに焦る二人に少し反応に困りながら、クラッシュマンがなぜか言い訳をする。
ふと、二人が隠すようにしているものがちらり、とクラッシュマンの視界に入った。
赤い装甲、白い二の腕。
無くなっていた、自分の腕だ。
「あれ? 俺の腕、何でここに…」
「っ! 止せ、くるなクラッシュ!」
駆け寄るクラッシュマンに、バブルマンが制止を呼び掛けるが、間に合わなかった。

「……っっっ!!」

クラッシュマンの視界に、ボロボロの青い機体がうつされる。
見た光景に、クラッシュマンのシステムがフリーズした。
アイセンサーはそのまま、保潤を施す瞬きすらせずに青い機体を凝視する。
その機体の胴体部には、先ほど視認した自分の両腕のドリルが刺さっていた。
すぐ下の弟機体、フラッシュマンが機能停止して横たわっている。
クラッシュマンの顔が、凍り付いた。
「っ……………」
見られた、とエアーマンが苦しげな顔をして、固まってしまったクラッシュマンに声をかける。
「……クラッシュ、お前もメンテ中だ、地上のラボに戻れ」
「……れの腕…」
しかし、クラッシュマンは聞こえていないかのように呆然とつぶやいた。
ぐるぐると、クラッシュマンの思考が回る。
「俺の腕、何でフラッシュに……? なんで……」


何で。


(あの腕は、確かに俺の)


俺が…俺が壊した?


(横たわっているのは、確かに俺の)


どうして、兄弟機を…どうして、仲間を?


(フラッシュ)


最初の、弟を。


嘘だ……イヤだ。


────イヤだ────


固まったままの顔で、ふらりとクラッシュマンが動く。
そのままフラッシュマンに駆け寄ろうとするクラッシュマンを、エアーマンが抱きとめた。
がちん、と装甲がぶつかる音が響く。




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