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□声 (前編)
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赤く赤く燃えてしまえ。
全て瓦礫に帰るがいい。

燃える炎、炎に似た目。
どんなに呼ぼうとも、彼までどうしても届かない。







また一つ、爆発音が上がる。
一瞬遅れて、その威力を物語る爆風がバブルマンとフラッシュマンを煽った。
「ぅわっ……!」
「ちっ……!」
辛うじて残っていた、かつてビルの壁だった大きめの瓦礫に隠れ、バブルマンと
フラッシュマンは周りの炎の高熱と、吹き飛んでくる瓦礫の破片から逃れていた。
二人は、その炎と爆風の発現場所の方に顔を向け、二人のアイセンサーはその原因を視認する。
爆風の向こう側、瓦礫の中央にいる朱色の機体。
原因は、バブルマンの二つ下の弟機体でフラッシュマンのすぐ上の兄機体、クラッシュマンだった。
「あ…んの、バカが…!」
フラッシュマンが、その兄機体に悪態を吐く。
今回は、三人で組む潜入任務だった。クラッシュマンは二人の護衛役で、主な
任務はバブルマンとフラッシュマンの役目だ。
二人が施設に潜入したあとは、クラッシュマンはあらかじめ予定していた場所で
待機しておくはずだった。しかし、二人を待機して待つ間に警備のガードマシンに
見つかってしまい、戦闘に突入してしまった。
潜入していた二人が、戦闘が開始されたことに気付き脱出すると、潜入したときは
あった建物が途中から瓦礫と化していた。
人々が逃げ惑い、二人の姿など目に入らないかのようにひたすら破壊のもとから
離れようとしていた。瓦礫の中央には、目を赤く光らせ、楽しそうに笑い声を
あげドリルを回す、破壊魔と化した兄弟機。
理性を司る論理回路を、破壊衝動が出力にものを言わせ凌駕している。
今彼が求め行うのはただ一つ、破壊のみ。

───暴走───

二人が彼の状態をそう認識したとき、理性を失った兄弟機は二人に向かって爆弾を放った。

そして、今にいたる。

「兄弟機の区別もつかねぇたあ恐れ入る…」
フラッシュマンがこの状況に愚痴をこぼす。通信機に手をやり、爆風と高熱から
せめてもの壁を作り、作動させた。
『エアー兄貴、バカが暴走。至急救援に来てくれ』
『了解。すぐ行く』
暴走したクラッシュマンを止められる次兄と端的に通信し、フラッシュマンは
エアーマンに助けを求める。しかし、基地にいる次兄が救援に来るのは、まだ
時間がかかるだろう。水中専用の機体の兄は、周囲の炎の高熱に酷くつらそうにしている。
オーバーヒート寸前だ。
さて、どうしたもんか、とフラッシュマンは思考回路を無理矢理動かす。
水路だ。
水道管だ。
それさえ、兄機体が入れて水路として使えるものさえあれば、とフラッシュマンは考える。
これ以上ここにいれば、バブルマンはエアーマンが来る前に高熱にやられてしまうだろう。




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