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潜って、泳いで、たゆたって。
場所は違えど同じ事。



似てるかな



「ねぇ、水のなかってどんな感じ?」
「僕にとってだけど、気持ちいいよ自由に動けるし」
ふうん、とこたえる七男に、バブルマンは室内プールの中から質問を返す。
「でもどうしたの、まさかとは思うけど入りたいの? 泳ぎたいわけ? 自殺なんかするなよ」
「違うよっっ!」
プールサイドの淵に座り込むヒートマンが兄の考察に突っ込む。
誰がそんなことすんのさ!と声を荒げた。
「そーじゃなくてさっ! 確かに僕は水が怖いけど、中ってどんなのかなって思って聞いてみただけ!」
「へえ…あ、そうだ」
弟の言葉にバブルマンは一つのことを思いだした。
兄の言葉にヒートマンが顔を向ける。
「ん、何?」
「フラッシュがね、前に言ってたよ。ネットにいるときと、水ん中にいるときが
 何か似てるって。僕はそこまでネットにリンクしないから分かんないけど」
「へえぇ、でもフラッシュも泳げないじゃん?」
「僕と水中使っての潜入任務の時とか、僕が抱えてやるからその時のこと言ってんじゃない?」
まあ、やっぱり沈むからちょっと苦手みたいだけど、とバブルマンは言った。
バブルマンの言葉にヒートマンは考える。すぐ上の兄は任務やただの暇つぶしに、
ネットに深く潜り込んで情報を盗む。
そのネットにいる感覚が、この緑色の兄機体の好む水の中と似ているらしい。
「ふうん、僕もあんまりネットにリンクしないけど、そっちなら出来るからやってみようかな」
フラッシュほど深くはいけないけど、とヒートマンはつぶやく。
「あ、何だヒート結局泳ぎたいわけじゃん」
「別にいいじゃーん」
指摘を認めた弟に、バブルマンはくすくすと笑った。
「んじゃ、やってみたら感想聞かせてよ?」
「どーしよっかなー、気分が向いたらね」
マイペースな弟の様子にまた笑みがこぼれた。とぷりと潜り、泳ぎ、たゆたって
心地よいこの感覚を同じようなもので味わえれば彼は何というだろう、とバブルマンは思う。

水のなかと、ネットのなか。全然別のものだけど。
似てるかな。



おわり
2008年10月22日 更新

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