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□返事
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「とっさに胸部をかばったのがよかったのう、下手したら内部回路もんじゃ」
「すんません博士、俺こないだメンテしたばっかなのに…」
焦りまくったメタルマンに引きずられ、フラッシュマンはワイリーのラボに来ていた。
ワイリーはメタルブレードが刺さった右腕をフラッシュマンから取り外しながら、
息子に声をかける。その様子を、なぜだか一緒についてきたヒートマンが眺めていた。
「まあ、これからは模擬戦闘中にトレーニングルームに入らないことじゃな」
ワイリーが息子たちに苦笑いしながら言葉をかけた。
「はい…」
バツが悪そうな顔をして、フラッシュマンが父に返事をする。
すると、メタルマンが、ひどく申し訳なさそうに父に話し掛けた。
不慮の事故とはいえ、弟機体を傷つけたうえ、父に迷惑を掛けるわけにはいかない。
「俺のせいです、俺がフラッシュの腕を直します、博士」
「そうか? ワシがしても構わんが、どうする、フラッシュ?」
「俺も博士の手煩わせたくねぇから、メタルに頼みます、寝てください」
「わかった、すまんな。なら任せたぞ、メタル」
「はい」
「お休みなさーい、博士」
そう言って、ワイリーはラボから出て自室に戻っていった。
ここのところ兄弟機のメンテナンスが続いたので、少し寝ていなかったのだ。
息子たちの気遣いに感謝しながら、ワイリーは疲れを癒そうと去っていった。
父が去ったあと、ヒートマンがのんびりとすぐ上の兄を見上げてつぶやく。
「災難だったねー、フラッシュ」
「めっちゃ他人事っぽく言うな、ヒート」
その弟機体に、フラッシュマンは呆れたように見下ろした。しかし、心外そうに
ヒートマンが声をあげる。
「えー? これでも心配してるのにー」
「その面と声でか」
「まあ、一応」
あっけらかんと答えるヒートマンに、青い兄機体がほうほう、と怪しく笑った。
マイペースな弟機体の蓋のような外郭に手をかけ、ぱたん、とフラッシュマンが閉じる。
「わー、何すんのー!」
「仕返し」
片腕がないまま、フラッシュマンがヒートマンとふざけあった。
その連番の弟機体たちのじゃれあいの間に入り、メタルマンがおろおろと声をかける。
「ごめんな、フラッシュ…お兄ちゃんが…」
「いーから俺の腕とっとと直しやがれ」
申し訳なさそうな長兄に、フラッシュマンがヒートマンとふざけるのをやめて声を返した。
心配される事を、自身の事は棚に上げて、フラッシュマンはあまり好まない。
ひどくすまなそうな長兄は、自身が傷つけた弟機体の様子を気にして酷く狼狽えている。
「本当に、すまん」
「いいっつってんだろーが、いきなり部屋入った俺がわりいんだし、…いいから
 さっさと腕付けてくれ、メタル」
苦笑いを浮かべ、フラッシュマンは長兄に声をかけた。とにかく、片腕のままでは色々と不便なのだ。
「ああ、すまん、スペアの腕、今つけるから」
メタルマンは慌ててフラッシュマンのタイムストッパーのメンテナンス時に
付ける、左腕とかわらない構造の右腕を手に取った。
ブラコンで心配性で、しかし確かなメンテナンスの腕をメタルマンが持っている
ことを、フラッシュマンもヒートマンも知っている。
(頼りがいがあるんだか、ないんだか)
ヒートマンがくすくすと笑いながら、一つ上の兄に腕をつけようとする長兄を眺めた。




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