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□返事
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例え止める事が可能でも。
時間は流れていくばかり。



返事



トレーニングルームに、高温の炎が燃える音と、冷たい金属音が鳴り響く。
長兄のメタルマンと、七男のヒートマンが模擬戦闘を行っていた。
互いに武器を繰り出し相手を攻め立てるが、その表情は二人ともどこかのんびりしている。
模擬戦闘とはいえ、真面目に戦ってはいないらしい。
炎を繰り出しながら、ヒートマンが長兄に問い掛けた。
「何で、クイックは切れて、しかもフラッシュと喧嘩になったのかな?」
「分からん、お兄ちゃんは心配でたまらないが、聞いてもクイックはだんまりで
 フラッシュは知らないって物凄く冷たかった」
メタルマンは弟機体の言葉に心配そうに返答を返し、高く跳躍し炎を避ける。
そのまま、メタルマンは空中からメタルブレードを投げた。
「クイック、何か凄い怖いよね、最近」
「そうだな、悩んでるようにも感じる」
二人は、数日前の兄弟機について話していた。
しょっちゅうと言うほど喧嘩をする四男と六男の、しかしいつもと違う今回の
喧嘩の様子について、二人は意見をかわす。
正反対な性格の、機体色まで反対な二人の兄弟機の喧嘩は、基本的にクイックマンが
フラッシュマンに突っ掛かかり、フラッシュマンがそれに口で反応し、喧嘩に
発展するのがいつもの事だった。
しかし、その度にフラッシュマンがその状態に面倒臭くなり、そのまま何となく
二人ともいつも通りになるのが常なのだが、今回はそのフラッシュマンが本気で怒っている。
珍しい、とヒートマンが不思議に思った。
普段、何だかんだで見てしまう面倒見の良さの反動か、フラッシュマンは本気で
怒れば怒った相手にひどく冷たくなり、意識することすらしなくなってしまう。
滅多にないから忘れがちだが、一旦切れるととても長い。
タチが悪いなあ、と思いながら、ヒートマンが口を開いた。
「フラッシュが切れるの、久々だねえ」
フラッシュ切れたら凄い冷たいからイヤ、とヒートマンがメタルブレードを
かわしながらつぶやく。愚痴が多いが、フラッシュマンはそうそう切れることは少ない。
愚痴で発散してるからかな、とヒートマンがぼんやり気付いた。
ヒートマンが避けたメタルブレードは、目標物に当たることが出来ずにそのまま
ヒートマンの後方へ飛んでいった。
すると、その進行方向にあるトレーニングルームのドアが、急にスライドする。
「おいメタル、いるか? ウッドが…」
そこに、フラッシュマンが入ってきた。
「!? フラッシュ、避けろ! 危ない!!」
突然の訪問者に、よりによって自身の武器が弱点の弟機体に、慌ててメタルマンが
警告の声をあげる。自身の放った武器が、弟機体に襲い掛かる。
「な───…!?」
しかし、急なことにフラッシュマンは完全に不意を突かれ、反応が遅れた。
いきなりの弱点武器の接近に避けきれず、とっさに胸部を庇う。
「ぐあっ!?」
メタルブレードが、フラッシュマンの右腕に突き刺さった。




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