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□心配
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「なぁに笑ってんだよ、バブル兄貴もヒートも?」
すると、六男のフラッシュマンが広間に入ってきて、語り合っていた二人に声をかけた。
突然の兄弟機の参加に、バブルマンとヒートマンは笑うのを止め、顔を向ける。
「フラッシュ、基地から帰ってきたの、お帰り」
「やっと帰ってきたー! まーた自分の基地でずっと部下のメンテしてたわけ?
 相変わらず、というか、フラッシュちょっと部下に優しすぎじゃない?」
「ほっとけ。俺の勝手だ」
穏やかに声をかけたバブルマンとは逆に、ヒートマンが不満でたまらない、と
いった声を広間に現われたフラッシュマンにぶつけた。
そんなヒートマンに、フラッシュマンはそっけなく答える。
フラッシュマンはここ数日、自身が担当する基地に籠もり、自身の部下のメンテ
ナンスを行っていたのだ。ナンバーズは、基本的にワイリーがいるメインの基地に
身を置いているが、そう遠くない位置に各自に割り振られた別々の基地も持っており、
そこには主に各自の部下の部隊が控えていた。
各自の基地を拠点に任務を行ったり、部隊編成などのため、ナンバーズは時折
各自の基地に身を置くことがある。
フラッシュマンは部下の面倒を見るために、兄弟機のなかでも特によく自身の
基地に赴いていた。他の兄弟機なら父や、もしくは部下自身に任せがちな部下の
メンテナンスを、彼自ら行う。そのためか、フラッシュマンは他の兄弟機に比べ、
自身の部下に慕われていた。無愛想でぶっきらぼうなようで、彼は自分の部下たちに優しい。
その部下たちの世話を終えやっと帰ってきたすぐ上の兄機体を、ヒートマンが見上げた。
むぅ、とむくれながらつぶやく。
「だって、いつまでも帰ってこないで、誰が僕のこと抱っこすんのさー」
「メタルもエアー兄貴もウッドもいんだろ、しょうがねえやっちゃな」
言外に淋しかったのだ、とヒートマン本人としてはばれないように言葉にしたのだが、
すぐ下の弟の言わんとすること正確に読み取ったフラッシュマンは、やれやれとした
表情を浮かべた。存外に寂しがりで、こども扱いを嫌い、生意気な割に甘えたがる
七男の傍にフラッシュマンが歩み寄る。
ヒートマンの脇に手をいれ、ひょい、と抱えあげて座り、弟を膝に乗せた。
「これでいいかよ」
「ん!」
「ふふ…」
微笑ましい弟機体たちの姿に、バブルマンが笑みをこぼす。
自身の部下だけでなく、寧ろこの六男は部下よりも兄弟機に対して面倒見がいい。
次兄が以前、この青い弟機体を「損な性分だ」と言い表わしていたことを、バブルマンは思い出す。
面倒臭がりなくせに、放っておけなくて世話を焼く六男を眺めながら、バブルマンは
回路の中でこっそり次兄に同意した。




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