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□心配
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デジタルならば、可能だろう。
現実ならば、無理な話。



心配



「え、何、バブルもクイックに相談されたの?」
クラッシュマンにもらった今日の分のボムをかじりながら、ヒートマンがバブルマンに
話し掛けた。広間の椅子に座り、バブルマンと、珍しく誰の膝にも乗っていない
ヒートマンが雑談している。広間にはバブルマンとヒートマンだけしかおらず、
二人は最速を誇る四男を話題に出していた。
ヒートマンが、意外、というふうに四つ上の兄機体を見上げる。
バブルマンとヒートマンは以前、クイックマンからある相談を受けたことが
あるのだが、どうやらそれについて話しているらしい。
「うん、この間だから、お前より後にね。ヒートに考えろって言われたけど
 分かんないっていうから、軽く背中を押してあげたよ」
「えー、って事は言っちゃったわけ、クイックがどういう状態なのか?」
背中押したって、絶対軽くじゃないでしょ、とヒートマンが緑の兄機体に不満そうにつぶやく。
すると、バブルマンは悪怯れない様子でと肩をすくめて、弟の問いに答えた。
「ヒートのヒントが、あいつには難しすぎたんだよ」
「えぇええー。でも、そーいうのって自分で気付かなきゃ意味なくない?」
兄機体の言葉に、更に不満そうな声をあげ、ヒートマンが意見を述べる。
すると、バブルマンは自身より目線が低いヒートマンを見下ろし、再度答えた。
「だから、あくまでも僕の意見として、僕はそう思うけどって言ったまで。
 その先はさすがにあいつ次第だよ、それくらい僕にも分かってるって」
バブルマンの話を聞き、ヒートマンがふーん、と考え込む。
でも少しくらい、多分、絶対、面白がっているんじゃないの、とヒートマンは
思ったが口に出さなかった。
この兄機体が、実は結構楽しいこと好きなことを、ヒートマンは知っている。
足をぶらぶらさせながら、ヒートマンがぽつりと言葉をこぼした。
「むー…。……ていうかさ、…相手誰だろね?」
「さあ、それは教えてくれなかったよ。今思えば、誰のことか聞いてから背中押せば良かった」
「…バブル、面白がってない? 悪趣味だなあ」
兄の口振りに、やっぱり、と先ほどはしなかった突っ込みをヒートマンが入れる。
この兄機体は、心が広く優しいが、妙に要領がよく、おいしいとこどりなところがあった。
しかし、言われたことを意に介さない様子でバブルマンはヒートマンに微笑み、
少し声を落として囁いた。
「とか何とか言っちゃって、ヒートだって少しくらいは面白がってるくせに」
「まあね」
言い当てられ、二人でくすくすと笑い合う。
正直な所、強さと速さを誇ることばかりにかまけていた兄弟機に訪れた変化は、
ヒートマンにとっても興味深いものだった。
二人とも四男の事を応援しているが、同時に、相談されたためだろう、どこか
楽しんでいるところがある。兄のことを言えない七男と、広い心で見守りつつ
面白がっている三男の笑い声が、小さく広間にこぼれた。




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