Main

□面倒
3ページ/6ページ





す、と意識が沈み、繋がっていく。
そのまま溶け合うような、浮遊感に似た感覚に二人は包まれた。
ダイレクトリンクは、コードを伝って互いの情報や思考を直に感じ合うことができる。
コードを通して、フラッシュマンがエアーマンに写真のデジタルデータを送り始めた。
エアーマンの閉じた視界に、フラッシュマンから次々と送られてくる膨大な
イメージがうつりだす。その中から、エアーマンは目当ての何枚かを探して選び出し、
その情報を弟に伝えた。すると、すぐに了解、と返事があり、さらにもういいのか、と
信号が送られてくる。それにもういい、と返すとまたすぐ了解、と返信があった。
エアーマンに送られていた膨大なデータが、フラッシュマンに戻っていく。
すると、コードを伝う情報が途切れ、リンクが解除され始めた。
ふわ、と二人の意識が浮上し、ダイレクトリンクが終了する。
アナログでなら時間が掛かったであろう作業が、ものの数秒で終わった。
「…ん……」
フラッシュマンがリンクの解除に、小さくうめきをあげる。
エアーマンがうっすらと目を開けアイセンサーが再機能すると、同じくうっすらと
目を開けている弟が視認された。
眠そうな、怠そうな表情だと思ったが、すぐにお互い様だろうとエアーマンは考え直す。
直に深く意識を繋いだあとは、駆動系統はすぐに機能できない。
ダイレクトリンクの余韻の表情は、しかし互いの額がくっついていることに気付き、
互いにどこか惚けたものにかわる。
どうやら、先ほどの姿勢からたった数秒の間だったのに、二人して体勢を保てず、
もたれ合うように額をくっつけていたらしい。
その状態で、しばし二人とも固まり見つめ合う。
驚き惚けた様子のフラッシュマンが数秒の後、ふ、と笑みをこぼした。
「ぷっ……っくくく…何だこれ、だっせえな、お互いに…」
驚くでも呆れるでもなく、単純にこの状態が可笑しいらしく、フラッシュマンが笑いだす。
その弟の様子に、そうだな、とエアーマンが少し笑いながらつぶやき、互いに額をはなした。
エアーマンが自身の側頭部からフラッシュマンのコードを外し、互いに向き合っている
姿勢をなおす。弟の笑顔を見ながら、エアーマンはフラッシュマンの頬に、す、と手を添えた。
「?」
兄のそのいきなりの行動に、フラッシュマンは自身より高いエアーマンを何だ、と見上げる。
「何だよ、エアー兄貴?」
「お前、笑うときはいつもそんな風に笑え」
「……はい!?」
からかうでもなく、バカにするでもなく、エアーマンは自然に口にする。
エアーマンは、以前も思った言葉を、今度は弟にちゃんと伝えた。
しかし、次兄の言葉に、フラッシュマンが固まる。理解できない、といった顔をしていた。
エアーマンはそんな弟の様子に、ふっ、と笑い、更に言葉をつらねた。
「いつもの悪人面より、ずっといい」
「なっ…なぁに言ってんだ、笑い方なんざいつも同じだよ!」
兄の言葉に少し顔を赤くしながら、フラッシュマンがぺし、と軽く兄の手を
払いながら吐き捨てる。わけ分かんねえことを、余計なお世話だ、とつぶやきながら
フラッシュマンはエアーマンから視線をそらした。
それが赤くなってしまった顔を見られないようにとった行動だと、次兄は気付いている。
相変わらず、素直じゃない上に照れ屋な奴だ、とエアーマンは思った。
そして、そう思っていることをフラッシュマンに知られないよう、こっそりと微笑んだ。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ