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□面倒
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ふと、エアーマンが隣に立つ弟に顔を向けて問い掛けた。
「そう言えば、お前は怒ってはないのだな」
「怒ってたけどよ…、翌日は博士もメタルも二日酔いだったからシステムエラー
 起こしたヒートのメンテ俺がしなきゃならなかったし、あいつどうせ覚えてねぇし、
 説明すんのも何だし、何かもお意味ねえと思ってよ」
次兄の問い掛けに、フラッシュマンが愚痴混じりに一気に答える。
しかし、エアーマンはその弟の疲れたような言葉に少しだけ小さく笑みをこぼした。
そうやって愚痴を言いつつ、すぐ下の弟のメンテナンスはしっかりやった、と
いうことにエアーマンは気付いている。
結局、この弟は面倒臭いと言いながら面倒見がよい。損な性分だ。
そうエアーマンは思ったが、言ったら怒りだすだろうとも思ったので口には出さなかった。
フラッシュマンは、そんな兄の考えも知らず、次兄に問い返す。
「…でも、あいつから逃げるにしても、何でここなんだ?」
「いや、どこでもよかったのだが、何となくだ」
「落ち葉の季節だっつーのにか?」
落ち葉の季節は、エアーマンの苦手とする季節だ。その季節に、いくらこの場所
まで落ち葉は届かないとはいえ、森の見える場所に次兄が現われたことがフラッシュマンは
意外だった。次兄の答えに、フラッシュマンが浮かんだ疑問をそのまま口にする。
エアーマンは、弟に顔を向けたまま再び答えた。
「ああ、何でだろうな。気付いたらここに足が向いていた。邪魔か?」
「まさか、んなこたねえよ。不思議なだけだ」
「そうか」
そのまま言葉が途切れ、何となく二人して風景を眺める。
吹く風が何だか心地よかった。
「ああ、もう一つ聞いていいか、フラッシュ?」
「あん?」
「いや、森を見ていて思い出した。この前の森の写真、あっただろう?」
「ん、何だ、また欲しいのがあんのか?」
「そうだ、あとで見せてもらえるか?」
「見るっつっても、数多いからな……」
兄の話を聞き、フラッシュマンがどうしたもんか、という表情をする。
言いながら、自身の頸部からフラッシュマンはコードを引き出した。
弟の行動を不思議そうに見ていたエアーマンに、フラッシュマンはそのコードを差し出す。
「いちいち写真みてたら時間かかんぜ。ダイレクトリンクしてデジタルデータで
 画像送るから、そっから直接選んでくれよ。そしたら焼き増しとくからよ」
「成るほど」
弟の言葉に納得し、エアーマンは自身の側頭部に手をやる。かち、とアクセスすると
小さなポートが現われた。
するとフラッシュマンはそこに手を伸ばし、コードを接続する。
そのまま、向かい合って額をくっつけ合うように二人がうつむいた。
二人が目を閉じ、リンクが開始される。




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