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□答え
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「フラッシュも何とかなるって言ってたぞ、安心しろ、クイック」
「……!!」
何とかなるとか、ならないとかじゃなくて。そうクイックマンは叫びたかったが、出来なかった。
「じゃあ、よろしく。お兄ちゃんお前らが任務に出たら淋しいぞ」
だから早く帰ってきなさい、とフラッシュマンに告げた言葉と同じ言葉を残し、
メタルマンはトレーニングルームから去っていく。
「……!!」
(そう言う問題じゃないんだ!!)
今更、それも心の中でクイックマンが叫んだ。
どうしよう。
つい最近、すぐ上の兄機体に相談を持ちかけたことをクイックマンは思い出す。
水中専用の機体の兄は自分の話を聞いて、自分の状態が誰かを好いている状態だ、と言い放った。
その兄にも、以前似たような相談を持ちかけた七男にも自分の思考を乱す相手を
教えなかったが、その相手こそ他ならない、今回任務を組むことになったフラッシュマンだった。
どうしよう。
そんなこと、長兄に言えるわけはない。父のためにも、任務に行くべきだ。
ならば、フラッシュマンとともに任務に出なければならない。
(……どうしよう!?)
顔を赤くしたり青くしたり、クイックマンはらしくなく悩む。
フラッシュマンを、すぐ上の兄が言う意味で好いているのか、クイックマンは
未だはっきりそう自覚しているわけではなかった。
何やら赤くなったり焦ったりするが、本当にそうと言えるか分からない。
ただの、気のせいかもしれない。
「!!」
(……そうだ、バブルがそう言っただけじゃないか。フラッシュが気になるのは
 気のせいだ、ただ俺が気にしなければいい!!)
ふと考え付いた、まるで言い訳のような考えに、クイックマンが全力で縋った。
早口言葉のようだ、と回路のどこかが突っ込みを入れるが無視をする。
それよりも、任務の準備をしなくてはならない。
そう思い、クイックマンは気力を取り戻し、とりあえず自室に戻るため歩きだした。
しばらくして、自身の部屋でクイックマンがブーメランの調整を行ってると、
誰かが近づいてきたことをセンサーが感じ取る。
「クイック、いるか?」
「!? ……いるぞ、何だ?」
「任務の相談でーす」
ぎくりとクイックマンの肩が震えるが、部屋の外にいるフラッシュマンは当然だが気付かない。
普段のようにドアにアクセスし、主人に声をかけた。
ドアにロックはかかっていなかったため、アクセスした段階でドアは開く。
部屋の中に入りながら、フラッシュマンは座っているクイックマンを見下ろした。
「ドア、ロックぐらいしろよ、不用心なやっちゃな」
床に適当に腰を下ろしながら、フラッシュマンは兄の不用心さを指摘する。
しかしすぐに「まあ、そんなことより」とフラッシュマンはベッドに座っているため
自身より目線が高い兄を見上げた。
「本題にいこうぜ、お前との任務久しぶりだからな」
そう言いながら、フラッシュマンが持っていた端末から潜入する施設のデータを呼び出す。
クイックマンは、そんな弟を見ても焦らないし赤くならない自分の様子に、やはり
気のせいだったのだ、と考えていた。
「今回は俺とお前の二人だから、データ送信できねえな……面倒臭えな…」
そんな兄の考えなど知らず、フラッシュマンが愚痴をこぼす。




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