Main

□答え
1ページ/7ページ





気のせいだ。
そうに違いない。
そう思えば、解決する。



答え



「マジかよ」
フラッシュマンが面倒臭そうにつぶやく。たった今、長兄が父の任務の命令を
伝えてきたのだ。内容は、情報の奪取。大手企業の研究工場に潜入し、新しく
開発されたらしいガードマシンの情報及び設計図を手に入れること。
それは、別に構わないのだが。
フラッシュマンは、分からない、という顔で長兄の顔を見て問い掛ける。
「何だって、クイックと俺が組むんだ?」
「俺はエアーのメンテしなきゃならんし。まあ、クイックはお前の護衛だ」
「護衛なら、クラッシュでもヒートでもウッドでもいいんじゃねえの?」
なぜ、よりによって自分の武器で傷つく兄と組むのか、とフラッシュマンは怪訝な顔をする。
相手を特定できない彼の特殊武器は、効かない兄弟のほうが多いのだ。
唯一、ダメージを受ける兄と任務を組むことは滅多にない。そんな弟のもっともな
問いに、メタルマンが答える。
「クラッシュとヒートは、別の破壊任務につくんだ。ウッドは博士がメンテする
 予定だからダメだ。バブルが使える水路は、今回はない」
「つまりは余った奴らが俺らってことか」
「まあ、そうなるな」
「……了ー解、まあ、何とかなんだろ」
「クイックにも俺から伝えておく、頼んだぞ、フラッシュ」
お前たちが任務に出たらお兄ちゃん淋しいぞ、という声を背にうけ、ああ、最後の
一言がなければ、と思いながらフラッシュマンが自身の部屋に向かった。
メタルマンは、任務についてもらうもう一人の弟のもとへ───トレーニングルームへ
───足を向ける。最速を誇る赤い弟は、暇さえあれば走ったりトレーニングすることを好んだ。
今日は他の兄弟機の身が空いていないため、クイックマンは一人でトレーニングに勤しんでいる。
メタルマンがトレーニングルームのドアにアクセスすると、しゅ、とドアがスライドした。
中にいる弟に、メタルマンが呼び掛ける。
「クイック、博士から出撃命令だ。任務についてくれ」
「む、何の任務だ?」
「この研究工場に潜入、情報奪取が目的だ」
「情報奪取か……」
目当ての施設のデータを弟に送信しながら、メタルマンが内容を告げた。
クイックマンは、告げられた内容に少し不満そうだ。
「安心しろ、戦うことはできると思うぞ」
「! 本当か!?」
長兄の言葉に、クイックマンが嬉しそうに食い付く。単純な弟にメタルマンが微笑み、さらに説明した。
「ああ、新開発のガードマシンとの接触は恐らく避けられないだろうし、
 何よりお前の役目は、同行するフラッシュの護衛が主だ」
「っ!!」
にこにこした長兄の言葉に、クイックマンが固まる。
「……あれ、クイック?」
「…………」
固まってしまった弟を不審に思い、メタルマンがクイックマンに呼び掛ける。
視覚システムに保潤を施すための瞬きすらしない。
立ったままシャットダウンでもしてしまったような様子だ。
「大丈夫か、どうした!? クイック、クイック!」
答えない四男に、メタルマンが心配してクイックマンの肩を掴み、揺する。
それに意識を取り戻し、クイックマンが愕然とした顔で長兄を見つめた。
「な、…んで、よりによって、フラッシュと!?」
「? 他に空いてる奴がいないんだ。データを盗むのはあいつ得意だし。戦闘に
 入っても、フラッシュのフォローがいるほどじゃないと思うし、お前なら大丈夫だろう?」
タイムストッパー作動しなきゃならん状況にはならないと思うぞ、とメタルマンが説明する。
兄弟機の、クイックマンの戦闘力に対する信頼は厚い。しかし、当のクイックマンはまだ愕然としている。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ