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□意味
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「ちょ、ちょっとクイック、一体何だよ?」
「……ヒートに前相談したら、そしたらお祝いだって言って、あいつウッドに
 お赤飯炊くよう頼んだんだ」
「へぇ…?」
「でも、その意味は教えてくれなかったから…」
「……どんな相談したのか知らないけど、だとしたら成長を喜ばれたんだね」
よりによって三つ下の弟に、とは口には出さず、バブルマンはクイックマンを見つめる。
戦闘時にはとても頼りになるこの弟機体に、一抹の不安をこっそり抱いた。
しばらく前のお赤飯にはそういう背景があったのかぁ、とバブルマンが思う。
「…会いに行った奴に待たされて、苛々してたら、そいつが見たことない顔で
笑ってるの見たんだ。
 で、気付いたら触りそうなほど近づいてて。それが何でだろうって、ヒートに
 相談したら、お祝いだ、お赤飯だって…」
「………」
クイックマンが、ヒートマンにした相談をバブルマンにも話す。
状況が想像つきにくいものの、ああ、こりゃお赤飯だ、とバブルマンは七男の
行動に今更ながら同意した。クイックマンはそんな兄機体の考えなどつゆ知らず、
ぽつりと俯き気味につぶやく。
「あと、もう一つ聞きたいことがあるんだ……」
「うん、何?」
「……それ以来、その笑った奴が、誰かの傍にいるのを見ると、俺怖い顔してるらしいんだ」
ヒートにそう言われた、と言うクイックマンの話をバブルマンは黙って聞いている。
「メンテもしてもらってみたけど、異常ないって博士が言うし」
「………」
「最初は分かんなかったけど、最近そいつがまた誰かと……一緒にいるの見て、
 ショックだって思った」
「………」
「でも、そいつと一緒にいると俺、何でか焦るし、何でか顔が赤くなった」
「………」
「なぁ、自分で考えろってヒートに言われたけど、考えても分かんないんだ」
「………」
困りきった顔で、クイックマンがバブルマンを見る。

「これ、一体何だ?」

「…………………っぶふぅっ!!!」
バブルマンが、耐えきれない、とばかりにとうとう派手に吹き出した。



「こ、……のっ……」
盛大に笑ってくれたすぐ上の兄機体を、クイックマンは顔を真っ赤にして睨む。
ぜいぜいと横たわり排気機能を荒げて、バブルマンがよろよろとクイックマンを見上げる。
「ごめ…ごめんごめん、笑うつもりはなかったんだよ。ブーメランしまって」
「笑うつもりなくても今笑ってんだろうが!!」
「ごめんって、だって、お前があんまり可愛いこと言うから。ブーメランしまってってば」
「…はあ!?」
可愛い、という兄の言葉に、構えていたブーメランを取り落とす。
何を言っているんだ、と驚いた顔をバブルマンに向けたまま、クイックマンが固まった。
「………おーい」
ひらひら、と顔に手をかざして振る。はっ、とクイックマンが再起動する。
「とりあえず、座ってよ、ブーメラン拾っといてね」
「む…分かった」
兄の言葉に従い、取り落としたブーメランを拾って再度座ったクイックマンに、バブルマンが微笑む。
「…可愛いって何でだ?」
俺はかっこいいと言われるほうが好きだ、とつぶやく弟に、バブルマンは部屋においてあったE缶を渡す。
「可愛いっていうか、微笑ましいっていうか。まあ、ちょっと長くなったし、飲みなよ」
「む、そうか、すまんな」




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