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□意味
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そんなこと、自分で何とかすればいいじゃない。
何とかできないなら手助けするけど、どうなっても知らないよ。



意味



「バブル、今いいか?」
「手合せならやだよ?」
「そうじゃない!」
クイックマンが、三兄のバブルマンの部屋を訪ねてきた。
部屋の主人は、予想される頼みごとの返事をしたがどうやら違ったらしく、即効で返された。
せっかちだなあ、とバブルマンは自身の連番の弟機体にいつもの感想を抱く。
すぐ上の兄機体を、クイックマンはどこかそわそわとしながらじっと見ていた。
最速を誇り、いつも落ち着きが無いといわれようと気にしない四男の意外な様子に、
バブルマンが訝しむ。
「どうしたの? とりあえず、入っておいでよ」
「む、すまん」
ドアの傍で立ったままの弟機体に、バブルマンが呼び掛けた。
クイックマンはその声に、いまさら自分が立ったままなのに気付いたらしく部屋に
入り床に座った。しゅん、とドアが閉まる。
「で、何? 珍しいね、お前がおとなしいなんて」
「……聞きたいことがあるんだ」
「うん、何?」
「…………………」
「………?」
「…………………」
「…………もしもーし」
神妙に切り出したかと思うと、途端に黙りこくったクイックマンに、バブルマンが呼び掛ける。
真剣な顔で最速の四男は床を黙って睨み付けていた。
何しに来たんだこいつは、床を睨んでどうしようというのだろう、とバブルマンが呆れ始める。
少しして、クイックマンが口を開いてはつぐんだ。話しだそうとしているらしい。
心が広い兄機体は、クイックマンが喋りだすのをまったりと待つ。
「…………………………」
「クイック、大丈夫?」
「……お赤飯の、お祝いの意味って何だ?」
「……は?」
あまりに黙っている最速の赤い弟を心配してみれば、やっと口から出てきたのは
訳の分からない質問。バブルマンはつい間抜けな声をあげてしまった。
「っだから、お赤飯の、お、お祝いって、どういう意味だ!?」
心なしか顔を少し赤くして、クイックマンが少し吃りながら質問を繰り返す。
なぜかより真剣な顔だ。本気で分からないらしい。
そういえば、しばらく前に突拍子もなくウッドがお赤飯炊いてたなぁ、とぼんやり
思いながらバブルマンが口を開いた。
「おめでたいことがあったときに炊くものだから、お赤飯って。お前の言う通り、
 お祝いの時に食べるものだよ。だから、ひとくくりに意味って言っても……」
「おめでたいって、何だ!?」
「質問したんなら少しは聞いてよ、クイック」
説明を遮ったせっかちな弟にバブルマンが笑う。おとなしかったり、いつも通りせっかちだったり。
今日の四男はやはり様子がおかしい、とバブルマンは思った。
兄機体の言葉に、クイックマンが申し訳なさそうに座りなおす。
「む、すまん。で…?」
「んー、おめでたいことって、例えば、人間の結婚とか、出産とか、あと、こどもの成長とか色々だよ」
「結婚に、出産!? 成長!??」
三兄の説明に、クイックマンが真剣に混乱する。
何やらショックまで受けている様子に、バブルマンが笑いそうになった。
結婚も出産も、ロボットの自分達には関係ないだろう、ただ成長だけは少しあるけど、
とバブルマンが考える。




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