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□ハロウィン・パーティー
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「あれ? でも、じゃあ何で悪戯していいんだ?」
ふと、メタルマンが疑問を口にする。
任務時には頭の切れる長兄は、人間の行う習慣などには意外に疎かった。
ハロウィンについてもかぼちゃを飾る、くらいしか知らない、と言うか興味がなかった。
興味がないのはエアーマンも同様で、七男の言葉の意味は彼もまた分からないままだ。
四男と五男は先ほどからポカンとした顔のままで、三男のみが微笑んでいる。
「ハロウィンってなぁ、全ての聖人の日、とやらの前日祭のことで、バケモンどもが
 聖人どもが蘇る前に騒いでやれって事で蘇って大騒ぎする日らしい。それにちなんで
 人間のガキどもが色んなもんに仮装して言うんだよ、お菓子をくれないと悪戯すんぞって。
 だから言われた奴らは菓子を配るんだ」
人間の祭りの一つだよ、とフラッシュマンが兄弟機に説明する。
「まあ、他にも豊穣の祭りだとか色々説があるみたいだけどな」
潜入や情報捜査、ネットに潜ることを主な任務として行う六男は、同時に雑学も通じていた。
「それはとにかく、そん時言う言葉が、“トリックオアトリート”(悪戯か菓子)なんだよ」
「……説明省きすぎだろう、ヒート!」
「間違ってはないじゃん」
「…っくく、あははは!」
クイックマンの再度の突っ込みに、ヒートマンは悪怯れなく言う。
全部知っていて、それでも黙って兄弟機の話を聞いていたバブルマンが、とうとう
耐えきれず吹き出した。
「ねえ、フラッシュ、ウッド。じゃあその買い物ってさ、もしかして」
「うん、そうだよ」
「もしかしなくても、ハロウィンの買い出しだよ」
ヒートマンのどこかわくわくした問い掛けに、ウッドマンとフラッシュマンが答える。
存外楽しいこと好きな父は、息子たちも楽しむように二人に買い出しを頼んだのだ。
ヒートマンが嬉しそうに弾けるような笑顔を浮かべた。



「どうじゃ、お前たち!」
黒い、こうもりの翼のようなマントを着て牙をつけ、父が広間に現われた。
「わー博士はドラキュラ? 似合う似合うー!」
ヒートマンが楽しそうに父に呼び掛ける。ヒートマンは目と口を出すところを
切り抜いた白い布を被っていた。
そのヒートマンを肩に乗せているウッドマンは、かぼちゃを被るのに加え、オレンジ色の
マントを着ていた。ワイリーもまた楽しそうに息子に答える。
「その通りじゃ、お前も似合っているぞ、ヒート。でも燃やすんじゃないぞ。
ウッドもよく似合っとるのう」
「えへへ、ありがとう、博士ー」
「ありがとうございます、博士」
「他の奴らは、どんな仮装なんじゃ?」
ヒートマンとウッドマンに笑いかけ、ワイリーは他の息子たちにも目を向けた。
見ると、メタルマンは何故か白衣に身を包み、バブルマンはそんな長兄に大笑いしている。
バブルマンは、全身に縫い跡の模様のシールを施された、ゾンビの仮装のようだった。
エアーマンはかぶされた帽子を別に気にすることもなく平然とし、それに加えて
手には箒が握られていた。
クラッシュマンは、クイックマンとフラッシュマンに手伝われ全身に包帯を巻いている。
なぜか頭部と腰、腕には派手な羽飾りがついていて、どうやら鳥とミイラの混合の仮装のようだ。
クイックマンは黒く細い尻尾を生やし、背中に同じく黒い翼、頭に角をつけた悪魔らしく、
フラッシュマンは頭に大きなねじをつけ、体や顔にはバブルマン同様大きな縫い跡の
シールを貼ったフランケンシュタインの仮装のようだった。




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