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□ハロウィン・パーティー
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いつもと同じ。
いつものこと。


ハロウィン・パーティー


「ねえクラッシュー、クラッシュボムちょうだーい」
「さっきやった。もうダメ」
広間のソファに座っているエアーマンの膝のうえで、ヒートマンはクラッシュマンに呼び掛けた。
あっさりと返されるクラッシュマンの言葉に、しかしヒートマンは挫けない。
「いいじゃん今日は。くれなきゃいたずらするよ?」
「こら、ヒート。その台詞、お兄ちゃんは聞き捨てならんぞ!」
「だって、博士が言ってたもん。今日はそういう日だって」
自身を叱るメタルマンに、ヒートマンが父を理由に言い返す。
「は? 博士が?」
七男の言葉に、メタルマンが目を丸くする。父が悪戯を容認する理由が、長兄には思い当たらない。
メタルマンは叱ろうとしたことを忘れたかのように、ヒートマンを見つめた。
しかし、そんなことはお構いなしに、ヒートマンは再度ねだる。
「だから、ねークラッシュ、ちょうだい」
「……何で今日はいたずらしていいんだ?」
クラッシュマンが分からない、と言った顔で二つ下の弟に問い掛けた。
しかし。
「くれたら教えるー」
「………」
平然とそう言ってのけるヒートマンに、何を言ってももうそれしか言わないだろう、
と思ったクラッシュマンが、渋々ボムを渡してやる。
ヒートマンは嬉しそうにそれを受け取った。
ボムを噛りながら、ヒートマンが約束どおり説明をはじめる。
「あのね、昨日博士が教えてくれたんだけど、今日はお菓子をくれなきゃいたずらする日なんだって」
「……何だ、その理不尽な内容は…」
「ていうか、それ菓子じゃないだろ」
七男の口から説明された内容に、膝のうえの弟を見ながらエアーマンが呆れたように口を開いた。
何となく話題を聞いていたクイックマンも突っ込みを入れる。
メタルマンは訝しげな顔をして、ますますヒートマンを見つめた。
クラッシュマンはクエスチョンマークが頭に浮かんだままで、さっぱり納得していない。
ひたすら黙って、しかしニコニコとしながら聞いているのはバブルマンのみである。
それではただのわがままではないか、と次兄がつぶやいた。
そこに。

「トリックオアトリート、ってやつだろ?」

かぽり、と突然エアーマンの頭に黒いつばのある三角の帽子をかぶせ、いつの
間にか現れたフラッシュマンが言う。隣にいるウッドマンは、かぼちゃをくりぬいた
顔のような模様がついたものを頭にかぶっていた。
「あ、おかえりー、二人とも」
「ただいま、ヒート兄ちゃん」
現れたすぐ上の兄とすぐ下の弟に、ヒートマンが声をかける。二人は、博士に頼まれて
町へ買い出しに行っていたのだ。
何を頼まれたのやら、二人とも大きな袋を抱えている。
「何だそれは、フラッシュ。ウッドも、頭になぜそんなものを被っている?」
たいして動じずに、エアーマンが背後に現われた二人に問い掛けた。
すると、いつもとは逆に兄を見下ろしながら、フラッシュマンが口を開く。
「今日はハロウィンだよ、エアー兄貴」
そう言われて長兄と次兄が、ああ、と思い出したような顔をする。
「あー、だからかぼちゃ被ってるのか…似合うぞ、ウッド」
ニコニコとしながら、末弟にメタルマンが声をかける。ありがとう、とウッドマンも
またニコニコしながら長兄に礼をのべた。





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