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□みやげ
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『よう、成功したぜ、お前らも入ってこいよ』
『了解、無事で何より』
『当然だろうが』
軽口を交えた通信を切り、フラッシュマンはメタルマンに向き直った。
「おい、人間どもは核シェルターにぶっこんどくようメインシステムにプログラム
 うったから、離脱……」
しようぜ、と続けようとしたら、フラッシュマンは沈んで膝を抱えている長兄を視認した。
床に指でのの字を書きながら、メタルマンがぶつぶつと呟く。
「酷い、見捨てたりしないのに…逃げたりしないのに…」
「………………」
ああ、もう。とフラッシュマンは天井を仰いだ。
これさえ、この重度のブラコンさえなければ、といつも思う。
フラッシュマンは、これがあるからこそどうしてもメタルマンに兄と敬称を付けられないのだ。
(世話の焼ける……)
「おい、こらメタル!」
「…?」
「離脱すんぞ、おら! 立て、立って歩け!」
膝を抱えて座っていた長兄を引っ張り立たせ、離脱に入る。
「フラッシュ…お兄ちゃんはお前をだな…」
「だあぁもーしつけーな! ありゃただの厄落としだよ!!」
耐えきれない、と言わんばかりにフラッシュマンが叫ぶ。
「は? ヤクオトシ?」
「悪いことが起きないよう先に言葉にしとくっていう奴だとよ。ヒートから聞いた。
 脚を折れ、と同類だ。あいつもどっかで聞いてきたらしい」
だから、あんなパターンを考慮すんだよ、と弟がいっぺんにネタばらしをする。
犠牲になるのではなく、ならないために、強かに。
「…なんだ、そうか!!」
それを聞いて、メタルマンが一気に明るくなる。

すると。

どおん、と爆発音がし、研究施設が揺れた。
「! 始まったか、もうちょい戻った地点で、別行動に入るぜ」
「…分かった」
爆発音のおかげでメタルマンが任務時の顔を取り戻す。エアダストからの離脱後、二人は別れて引き続き別任務に就くのだ。
メタルマンは第二部隊の前線部隊に加わり、破壊活動に赴き、フラッシュマンは
前線部隊にクイックマンが加わっているため、後衛部隊に加わり待機。
「んじゃ、また後で」
侵入経路の分岐点に差し掛かり、長兄に背を向けたままフラッシュマンは呼び掛ける。
「ああ、後で」
メタルマンは去っていく弟を、任務時の顔で、しかし心配そうに見つめた。
『メタル、早くこい、何をぐずぐずしている』
『クイックか。今フラッシュと別れた、すぐに合流する』
せっかちな弟機体から通信が入り、急いで分岐点からメタルマンが走る。
一際太い場所に出ると、メタルマンはメタルブレードを取り出し、足元を切り裂いた。
そのままエアダストを突き破り、エントランスホールに飛び降りる。
飛び降りた先には、三人の弟機体が待機していた。
「合流完了!」
クイックマンがやっとか、と嬉しそうに声を上げる。
「メタル、フラッシュはー?」
「無事に別れた。あとは後衛部隊と合流するだけだ」
今回は少しやる気なさげなヒートマンがすぐ上の兄の所在を尋ねた。
メタルマンがそれに答え、それを聞いたクラッシュマンがドリルを回転させはじめる。
「そうか、ならもう遠慮はいらないな、壊すぞ」
データを奪取した後は、もうこの場所に用はない。
人間も、全員安全な場所に避難させた。
あとはここを壊すだけだ。





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