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□みやげ
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セキュリティシステムは、彼らの狙い通り、自爆プログラムの実行を考慮に入れる
構えらしく、自爆プログラムが呼び出された。
割り出すまでもなかったようだ。
こっそり控え、長兄とシステムの攻防を傍観していたフラッシュマンの、システムに
侵入した視覚に自爆プログラムが視認される。
実行させてやらねえよ、とつぶやきながら、フラッシュマンは捕縛プログラムを
展開させてその自爆プログラムをとらえた。
とらえ、読み込み、理解し、ではさようなら、と自爆プログラム自体を崩壊させる
プログラムを即座に組み、それを実行させる。
焼き殺すまでもない、自爆プログラムの仕組みを利用し、似たようなプログラムで
壊してしまえばいい。
自爆プログラムが、あっけなく崩壊した。
「はい、いっちょあがり」
そのあとはもう、長兄の手を煩わせることもなくフラッシュマンが一気に全システムを制圧する。
意識を機体に戻し、パネルからコードを抜いた。
すると、長兄もセキュリティの消えたザル状態のシステムからデータを奪いとって
戻ってきたらしく、アイセンサーに光が灯る。
「ん、こちらも完了だ。コレに暗号かけて送信してくれ」
「了解」
整備用パネルから、兄もコードの接続を外した。
メタルマンは、今度は頸部からコードを引きのばし、フラッシュマンの首の後ろに接続する。
先ほど奪ったデータを、弟に有線で直に送信した。
「ん……」
フラッシュマンがデータを受信し、その膨大な量に少し呻く。
そしてすぐにそのデータに暗号をかけて、フラッシュマンはワイリーに送信した。
今回は暗号の解読メモリを仲間に渡してはいない。
故に離脱に成功し、フラッシュマン自身が解読の役を担わなければならなかった。
離脱が不可能な損傷を受けた場合は可能なら長兄をフォローし、暗号のかかっていない
データを持つ機動力の高い、逃げられる可能性の高い長兄を離脱させるのが今回の彼の役目だった。
「なあ、暗号、もう少しどうにかならないか、フラッシュ?」
首のコードを外すと、メタルマンがフラッシュマンに尋ねてきた。
「何だよメタル、いまさら急に? 送信する以上、安全対策にこしたこたぁねえだろ」
「失敗した場合のパターン考慮とかプランとか、お前が犠牲になるのばっかで
 気分よくないぞ、お兄ちゃんは。何でいつも自分が犠牲になるパターンを
 考慮するんだ、フラッシュ?」
心配そうに、不安そうにメタルマンがフラッシュマンを見つめる。
つい先ほどまでの、頼れる切れ者の長兄はもうそこにはいない。
顔がもう兄バカのものに戻っている長兄に、フラッシュマンは少し呆れた。
言われた内容にもひどく呆れ、芝居がかったように口を開く。
「何、俺がいつ犠牲になるって、オニイサマ?」
「ん?」
「それはあれか、オニイサマは失敗したら俺を見捨ててお逃げになるわけ?」
「ふ、フラッシュ…??」
「あらあらあら、本当にお優しいオニイサマだこと」
「ちょ、違、ちょっと待て! 俺は断じてそんなことは!!」
軽蔑したような顔で次々吐き出される言葉に、メタルマンが焦って否定する。
可愛い弟を置いて離脱など、自分にはとてもできない。絶対に無理だとメタルマンは常々思っていた。
オニイサマ、と呼ばれ、そのあまりの冷たい響きに泣きそうだ。
「だったら、せいぜい失敗しないようするこった。こちとら、犠牲になる気なんて
 さらさらないんだよ」
そう言い放ち、フラッシュマンは控えている第二部隊のクラッシュマンに通信を入れる。





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