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□思い出
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広間には、他の兄弟機たちがすでに補給に来ていた。
「遅いぞ、お前ら」
「やかましいせっかち野郎」
待たされることが大嫌いなクイックマンの声をばさりと切り捨て、フラッシュマンが
抱えていたヒートマンを椅子に降ろす。
自身も座り、まわされたE缶を手に取った。各自、補給をはじめる。
「…ねぇねぇ、ウッド?」
こっそりと、ヒートマンが隣の末弟のウッドマンに呼び掛ける。
「なぁに、ヒート兄ちゃん?」
「あとでさ……」
他の兄たちに聞こえないように小さくおとした声で、ヒートマンはウッドマンに話を伝えた。
「? うん、分かった。いいよ」
ウッドマンは、ヒートマンの話の理由が分からなかったが、特に疑問に思うことなく承諾する。
「こら、お前ら、ちゃんと補給しなさい」
すると、まだE缶に手を付けずに喋っていたことを、長兄のメタルマンに見咎められた。
「ハイハイ」
「ごめんなさい、メタルあんちゃん」
適当に流すヒートマンと素直に謝るウッドマンに、メタルマンが目を細める。
この長兄は、弟機体がどんな反応をしようと可愛いようだった。
「バブル、為替レートをみながら補給するな」
「堅いこと言わないでよ、エアー兄さん」
「クイック…早飲みしてもエネルギー量はかわらないぞ?」
「何を言うクラッシュ、それだけ早く補給できるだろうが」
「………」
全く、個性的な兄弟機たちだ、という顔でフラッシュマンはE缶を傾けた。
カメラを持ってきていれば、一枚撮ろうかと思うような下らないが日常の風景。
補給し終わったら、アルバム整理の続きしないと、とフラッシュマンは思った。

「ごちそうさま」
「ごちそーさまー」
補給し終わったウッドマンとヒートマンが席を立ち、連れ立って広間から出ていく。
「ところで弟よ、ヒートと部屋で何してたんだ?」
「その呼び方面倒だからやめろよクラッシュ、当て嵌まんのが三人いるじゃねえか。
 俺は部屋で写真整理。ヒートはアルバム見てた」
「それで遅かったのかぁ」
「…バブル兄貴まで…。そんなに遅かったかよ。あーもー悪かったって」
クラッシュマンの問い掛けにフラッシュマンが答えると、ぼそりとバブルマンがつぶやいた。
緑色の兄機体の言葉に、フラッシュマンがばつが悪そうに言葉を返す。この兄が
そういうのなら、本当に遅かったようだ。
ふと、黙ってE缶を飲んでいたエアーマンが何かを思い出したように口を開く。
「ああ、フラッシュ。そう言えば、この間のお前の写真、あっただろう? あれ、
 一枚焼き増してくれ」
「こないだの俺のって…エアー兄貴が撮った奴か、別にいいけどよ、あれ何の記念なんだよ?」
先日、フラッシュマンが次兄に頼んで写真を撮りたい場所まで運んでもらった日に、
エアーマンはフラッシュマンの写真を記念だといって一枚撮っていた。
その時に、フラッシュマンはそれが何の記念かと問い掛けたが、エアーマンは答えなかった。
「さあな」
「またそれかよ」
同じ質問にまた同じ言葉で返した次兄に少し呆れたようにフラッシュマンがため息を吐く。





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