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□思い出
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理由なんて、いつも下らない。
だけど、だから面白い。



思い出



「ねえ、フラッシュ? なんで写りたがらないの?」
「あん?」
ヒートマンは、一つ上の兄のフラッシュマンが趣味で撮り集めた写真が入った
アルバムを眺めながらつぶやいた。フラッシュマンの
部屋のベッドの上で、(焦がすなよ、と厳命された)ころころとしながらもう
何冊目かわからないアルバムの写真を見ていたのだ。
アルバムの中には風景や父の姿、兄弟機の姿から不謹慎にも潜入中に撮ったらしい
人間の女性まで色々写っているのに、当の本人が写っている写真はほとんどみられない。
「何言ってんだヒート、撮ってる本人がどーやって写んだよ?」
「そりゃそーだけどさ、僕達は撮るじゃない、頼んでも、頼んでないときでも。
 大体、ウッドやメタルが撮るから入りなよって言っても写りたがらないじゃん、何で?」
机に向かっているフラッシュマンは、一つ下の弟の問いに興味なさそうに答える。
「いいじゃねえか、別に」
「…写真写り、悪いの? 悪人面だもんね」
「んなこと俺が知るかよ、顔はほっとけ」
「…もー何でさー!」
質問の答えになってないよ!とヒートマンが憤慨した。そんな様子に、机で写真を
アルバムに整理していたフラッシュマンが顔を向ける。
「あーもーハイハイ、俺は写真撮るのがスキなの撮られるのが趣味じゃねえの
 それだけだ、分かったか?」
「むう…」
一気に答えられた内容に、ヒートマンが若干不満げに黙る。そしてもう一度問い掛けた。
「本当にそれだけ?」
「…他にどんな理由があんだよ?」
俺今作業中なんですけど、とこぼしながらフラッシュマンが立ち上がり、ヒートマンの
そばに歩み寄る。ひょい、とヒートマンを持ち上げてフラッシュマンがベッドに座り、
ヒートマンを膝にのせた。
「どうしたんだ、ヒート? 何でんなこと聞くんだよ?」
「だって、何か納得いかない。一人だけ少ないの」
「別にないわけじゃねえだろ、分かんねえ奴だな」
膝に乗せられたヒートマンは、すぐ上の兄にもたれかかる。次兄のエアーマンや
末弟のウッドマンほどではないが、大きな体だった。
「んなことより、そろそろE缶補給行こうぜ、お前も腹減ったろ?」
「じゃ、そこまで運んで」
「……この野郎」
何やらごちゃごちゃといってくるから何なのか、とフラッシュマンが心配してみれば、
ヒートマンはもうあっけらかんとしていた。
このマイペースめ、と心の中でフラッシュマンは愚痴をこぼす。
しくじった、という顔をしながらヒートマンを抱えたまま広間へ向かった。
ヒートマンは、やはりまだ納得いかない、と思いながらも聞き出しようがないので
兄の腕に抱えられたまままだ考えている。





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