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□笑い声
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すると。

「………っっぶはっ!!」

その弟が、盛大に吹き出した。

「くっくっく……ぎゃはははははははははははは!! なんっつー顔してんだよクラッシュ!」
「なっ…、……!?」
いきなり笑いだすフラッシュマンに、クラッシュマンはひどく面食らった。
「あーひでぇ面、っくく、はははははは!!」
「……!?」
こっちは、お前の言葉にひどく落ち込んだのに。
フラッシュマンはクラッシュマンと違う意味で洗浄液を目からこぼし、兄の様子に
盛大に受けていた。未だその体を傷つけたことを怒っていると思った弟の、
先ほどの言葉と、今の様子のこのギャップ。
つまり、自分は。そして、弟は。
「……かっ、からかったな、フラッシュ!!」
「ぎゃああはははははは!! くそ、カメラがありゃ撮ったのにさっきの顔!」
排気機能を荒げてフラッシュマンが笑い転げる。その様子に先ほどと違う意味で泣きそうだ。
ひどい、酷いぞ弟め!!
まだ爆笑する弟に「どりゃあああ!」と奇声をあげながらクラッシュマンが掴み掛かる。
フラッシュマンは少し驚いたが、まだ笑いが納まらず、うまく兄にあらがう事が
出来なかった。そのまま二人もつれあう。
「ひゃはははは!!ちょ、ドリルはやめろよ、っくく…、ぎゃははははははは!!」
「笑うな、このハゲ!!」
「だぁれがハゲだ、このハト野郎、…っダメだ受ける! あははははは!」
弟をハンドに切り替えた手で押し倒し、抵抗してくる腕をつかんでもみ合う。
マウントをとられてもまだ弟は笑うことをやめない。

ちくしょう、悔しい!

「ああもう、重い、重いってクラッシュ! 退け!」
しばらくそうしてじゃれあっていると、弟が白旗をあげてきた。
「笑いすぎだろう! 」
「お前があんな面すっから悪ぃんだろ、あーあちい」
排気機能を荒げ、笑い疲れるまで笑ったフラッシュマンは排熱がうまく出来ず、
顔が真っ赤になっていた。
ひどい、悔しい。こんなに自分は気にしているのに、それをネタにしなくてもいいだろう。
そんな感情と思いがぐるぐるとクラッシュマンの思考システムを駆け巡る。
そう言おうとしたら、赤い顔で、再度弟はにやりと笑った。
「いっつまで気にしてんだよ、このバカ」
したり顔でつぶやかれた言葉に、クラッシュマンは目を見開き驚く。
「っ…!?」
「もーいいっつってんのにいつまでもウジウジしやがって。さっぱりしてんのが
 てめえの性格だろうがよ」
「………」
「テンションあげすぎなきゃいいだけだろ? たーったそれだけのことに悩みすぎだバカ」
こつりと、フラッシュマンの手がクラッシュマンをこづく。
クラッシュマンの暴走のきっかけは二つ。そのうちの一つは弟の言うとおり、
ハイになりすぎて破壊衝動が理性の回路を出力にものを言わせ凌駕すること。

からかわれた。笑われた。
バカにされたと、思っていた。

全部当たりで、でも外れのようだ。
弟が、自分の心を見透かしているかのように言葉を列ねたことに、クラッシュマンは
心にわだかまっていたものを全部流してくれた気がした。
そして再度示してくれる。
すっかり全てを許していると。





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