Main

□笑い声
1ページ/4ページ






したうだけが、仲じゃないだろ。



笑い声



部屋にアクセス反応が出た。誰か来たようだ。感知したそれに、フラッシュマンが立ち上がる。
扉のロックを解除すると、ドアは横にスライドし開かれ、部屋のあるじのフラッシュマンは
訪問者の姿を確かめた。
ドアの向こうに立っていたのは、朱色の機体色に白い腰部。すぐ上の兄機体、
クラッシュマンだった。
「ようクラッシュ、何の用だ?」
クラッシュマンはフラッシュマンよりも体格が小さいため、一つ下の弟は自然と
兄を見下ろすように問い掛けた。
「今度の任務、一緒に組むことになったぞ。弟よ」
「マジかよ。ってことは、久々に前線任務か、かったりいな」
任務の相談に来たらしい兄をフラッシュマンは部屋に招きいれ、聞かされた言葉に愚痴をこぼす。
二人の背後で、ドアがしゅ、と閉じられた。
「当たり。お前は前線に出るのは嫌いか?」
「別に嫌いじゃねえけど、面倒くせえ。お前が暴走すると俺死んじゃうし?」
兄には椅子をすすめ、自身はぼふりとベッドに座り込んで弟は兄に言葉を返した。
「うぐ……だから、俺が暴走しないよう、お前と組むんじゃないか」
弟の言葉にクラッシュマンはすまなそうにつぶやく。
普段明るくさっぱりしていておとなしいが怒ると怖い彼は、戦闘中の暴走となると
普段兄弟機に怒るときとはまた違い、理性がシャットダウンしてしまい文字通り破壊魔となる。
クラッシュマンには、戦闘中に暴走に転じるきっかけが二点存在する。その内の一つで暴走し、
過去にフラッシュマンを大破寸前にまで傷つけてしまったことがあるのだ。
兄弟機に、よりによって最初の弟に傷つけた。
それをひどく猛省して今でも気にしており、すぐ下のこの弟と組む任務ではそのことが
クラッシュマンの理性を守る砦となり、暴走原因を一つ減らしていた。
しかし、暴走もデメリットだけではない。二つ下の弟のヒートマンや長兄のメタルマンにはクラッシュボムが効かないため、
この二人と組むと相乗が相乗を呼び、より規模の大きな破壊が可能になる。
「まあ、いつもお前が暴走して、エアー兄貴に救助要請出すわけにいかねえもんなぁ」
フラッシュマンは辛辣につぶやき返し、兄に向かってため息を吐く。
「……暴走しないよう、努力する…」
「そーしろよ、それが一番だ。他力本願やめてもらいてえぜ?」
「ううぅ……」
そのことに関して許したと言っていたがやはりまだ怒っているのだろう、
弟の容赦ない言葉にアイセンサーの外部保潤兼洗浄液(つまり人に例えるなら涙)がこぼれそうになる。
ただでさえ体格が劣っているのに、弟にこうも言われますます兄らしくなれない己にクラッシュマンは嫌気がさしてきた。
自分を兄らしく扱わない弟に、兄と認められたいのに。あの次兄や三番目の兄にするように。
長兄はなぜか入っていないがとりあえず置いておいて、クラッシュマンはひどく落ち込んだ。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ