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□さがしもの
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「なあヒート」
「なにー?」
破壊活動後の上々な気分で帰還していた途中、クイックマンがヒートマンに話し掛ける。
「お前、よく誰かにくっついてるけど何でなんだ?」
「別にいいじゃん、特に理由なんかないけど?」
「いや、いいとか悪いとかじゃないが…」
にべもないヒートマンの答えにクイックマンが言い淀む。
「じゃあ何、こどもっぽいとか言ったら怒るよ?」
「そーじゃない! ……誰かにくっつきたいと思う気持ちはどんなのか、聞きたいだけだ」
「………はぁ?」
少し言いにくそうに、クイックマンがぽつりとつぶやいたそれに、ヒートマンがほうける。
「なんだクイック、メタルにくっつかれる理由、いまさら聞きたいのか?」
「違う!」
クラッシュマンの少しずれた突っ込みにすかさず返す。せっかちな彼は、だんだん
苛々しはじめた。その様子にヒートマンはやれやれと口を開く。
「…ふーん、何でまた急にそんなこと聞きたいの? まあいいけど。…やっぱり、
 安心するし、落ち着くし、一緒にいたいなって思うからだけど、どう、これで満足?」
「……ふむ、そうか。メタルの答えとお前の考えは少し違うんだな」
「メタルにもう聞いてたのかよ」
クラッシュマンの呆れ声に、しかし今度はクイックマンは反応しなかった。
長兄の答えは「そりゃ、好きだからさ!」だった。なのに三つ下の弟の答えは違っている。
「好きだとかとは違うのだな、ヒートは」
とりあえず今言えることを、クイックマンは独り言のようにつぶやいた。
しかし、ヒートマンは「ううん」首を横に振る。どうやら言えると思ったことはハズレらしい。
「へ?」
「んーん、ちょっと違う。似てるけど、別にくっつくから好きでくっつかないから
 嫌いとかじゃないもん」
「……?? そうなのか」
すぐに否定されて、クイックマンは混乱する。
「……ていうか、一体何なのさっきから。質問の要領を得ないんだけど、クイック?」
「……いや…その」
「フェアじゃないなあ。何だってそんなこと聞いたのさ、いい加減気になるよ。
それとも何なの、こっちに聞きたいだけ聞いて、自分はだんまり?」
先ほど、「まあいいけど」ですました疑問をヒートマンは口にする。
マイペースな性格の彼は隣を歩く兄を見上げた。
「ぐっ…」
ヒートマンの指摘にクイックマンの言葉がつまる。フェアじゃない、の言葉にぐさりときたのだ。
「……………」
しばらく考え込み、観念したように彼はぽつぽつと話しはじめる。
「………用があって会いにいって」
「…はぁ」
(誰にさ)
即座に思ったが、ここで突っ込んだら先へ進まないと思ってヒートマンがおとなしく続きを待つ。
「そいつが相手してくれなくて、苛々して」
(ああ、待たされたんだ)
何て想像に容易い、と思いつつも、乗ってきた兄の言葉にじっくり耳を傾けた。
「でも、気が付いたら俺そいつに近づいてて」
(……へえ?)
「そしたらそいつ、見たこともない顔で笑ってて」
(………。どんな状況なんですか)
「その顔見てたら、そいつが俺に気が付いて」
(え、何、てか盗み見だったの?)
「何でか俺焦って、そしたら用事が全部頭から吹っ飛んで、忘れてた」
(………。あらあらあら)
「そいつが俺に気付いたとき、いつのまにか俺、何でかすごく近づいてて」
(……………)
「何で近づいたのかその理由が分からないから、お前に質問したんだ。近づいたと
 いうことは、俺はそいつに触りたかったのかと思って。お前はよく誰かにくっついたり
 触ったりするだろう? だから誰かにくっつく理由って、何なんだろうと思ったんだ」
一気に喋り、クイックマンがふと排気をつく。



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