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□さがしもの
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答えは、自分で探しなよ。
それは自力でやらなきゃね。



さがしもの



燃えて燃やして焼き尽くす。
周囲は赤と黄に染まる。

「敵さんもしつこいねー、まだ諦めないよ」
工場地帯であったはずのその場所一帯を、すべて火の海にしたヒートマンが不適に笑った。
どこかで、ドオン、と建物が崩れる音がする。破壊を好むクラッシュマンが、
また一棟爆破したらしい。
「いくらでもくればいい。俺はまだやり足りない」
最速を誇るクイックマンは、敵に新たに加わった援軍を見て楽しそうにブーメランを構え、走りだした。

今回の任務は、至極簡単。
この工場一帯を破壊せよ。

「どこを見ている? 鈍足どもめ!」
敵陣に突っ込み、違法な構造が施された戦闘用の機械兵をクイックマンが切り刻んでいく。
「数が増えても、意味ないよ」
一陣の炎が境界線を引くよう激しく燃え上がった。新たに援軍が加わった敵を
ヒートマンが炎で囲い、敵の数の利を殺す。
『二人とも、俺にもやらせろ。クイック、跳べ』
クラッシュマンの通信に、クイックマンが跳躍する。
一瞬前までクイックマンがいた場所にクラッシュボムが数発打ち込まれ、強制的に
一ヶ所にまとめられていた敵は、数発の爆弾により哀れまとめてチリになる。
高く高く飛んだクイックマンが、すた、と地上に足をつける。
爆弾を放ったクラッシュマンが、敵が消え去った空間を満足気に眺める。
炎の尾を引き立ち止まったヒートマンは、楽しげに笑った。
破壊の任務をやり遂げて、炎と爆煙のなかに三人は立っている。

この工場地帯はある大手企業のもので、ガードマシン製造を主としていた。
しかしそれは表向きの姿で、水面下では違法の改造や研究をしており、ワイリー博士の
世界征服の邪魔になる施設であった。
自分の技術には及ばないと知りつつ、ワイリーはわざわざ息子たちに出撃命令を下した。
覇者は一人で十分だ。
息子たちの破壊力をおろかな者に知らしめる。
この施設が対象な理由も至極単純。
他ならぬ、見せしめに。

「博士の邪魔を、しないでよね」
君らと僕らとは、格が全然違うんだから。
拾ったクラッシュボムを一つかじりながら、ヒートマンはつぶやいた。
「む、もう終わりか、やりがいのない」
「建物はなかなか楽しめた。色んなサイズが揃ってて壊しがいがあった」
本日の感想を各々のべて、帰還準備に取り掛かる。
『もしもーし、こちらヒート。だれかいるー?』
ヒートマンが、基地のメインコンピューターに通信を入れた。
『どうした、ヒート?』
『あ、エアー? 博士に伝えて、全部壊したって。今から帰るね』
『分かった』
通信を切って、改めて哀れな工場の跡地を眺める。
赤と黄色に彩られ、感じる熱が気持ちいい。
(でも基地に着くまでには冷やさなきゃ)
熱に弱い弟を焦げ付かせてしまったら大変だ、とヒートマンは大切に思っている
自身の唯一の弟に思いを馳せた。




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