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□いろいろ
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「────まだ撮るのか?」
「ん、あと何枚か。風もっかい頼む」
弟の声に、エアーマンは何度目かの軽めの風を巻き起こす。風を受けた木々が
嬉しそうに枝を揺らした。その瞬間を閉じ込めるようにタイムストッパーが作動し、
フラッシュマンが写真を撮る。
ここは過去に任務でとある工場に赴いた際に発見した森で、美しい場所だった。
あまり人の手が入っておらず、そのせいか雑多な中に独特の調和がある。
フラッシュマンは前からこの場所を写真に撮りたいと思っていたのだが、若干
基地から遠く、単身で来るのが難しかったのだ。
しかし、次兄が送迎を許してくれたため、これ幸いとつれてきてもらったのだ。
幾度かのシャッター音がしたあと、時が流れを取り戻す。
「ん、もういいぜ、サンキュー兄貴」
「では、もう帰るぞ」
「あ、兄貴」
さくさくと帰還準備を始めたエアーマンに、フラッシュマンが突然呼び掛ける。
何だ、とエアーマンが振り返ると、パシャ、とシャッター音がした。
「……何をしている?」
「や、今日の空の色、兄貴に似てんなぁと思って。空をバックに記念撮影」
カメラを振りながら笑うフラッシュマンに、エアーマンは成る程と頷く。
「……そうか、お前も写るか?」
「あ? いーよ別に、面倒くせぇし」
「だから撮ってやるといっているんだ」
「いらんっつーの」
不機嫌そうにいいながら、フラッシュマンはエアーマンの横を通り抜けた。
自分は撮られ慣れていないため恥ずかしいらしく、頑なに拒む姿にエアーマンは小さく喉を鳴らした。
「素直じゃないな、全く」
「可愛げなくてすみませんね、じゃ、帰ろうぜ」
「可愛くないとは言ってない、素直じゃないと言ったんだ」
「もーいいっつうの」
やれやれ、と締めて、フラッシュマンが飛行装置に乗り込む。エアーマンがそれを
確認すると、ふわりと装置を浮上させて一路基地をめざした。



しばらくして基地の屋上にあるポートに着き、先にフラッシュマンが降りる。
久々に趣味の時間を堪能したためか、どこか機嫌がよさげだ。
「あー、今日はマジでサンキューな、兄貴」
エアーマンもポートに降り立つと、先程の憮然さを消してフラッシュマンが礼を告げてきた。
よほどいい写真が撮れたらしく嬉しそうだ。
「しょっちゅうは無理だが、たまになら構わん」
珍しくいつものような皮肉めいたものではなく、屈託ない笑顔を見せた弟に、
エアーマンはゆっくり言葉を返す。
「お帰り。エアーに弟よ」
そこに、クラッシュマンがやってきた。
「お、何だ、わざわざ出迎えか、クラッシュ?」
屋上のポートにわざわざ他の兄弟機が登場したことに、意外そうにフラッシュマンが尋ねる。
「いや、お前らが帰ってくるのが見えたから」
「ふーん」
「…………」
「何だよ、何見てんだ」
「いや、ヒートたちが言ってた。お前ら、色が似てるなあって。だからなるほどと思ったんだ」
「色だぁ? 機体色の話か?」
「うん。青い」
そう告げて、一人納得したらしいクラッシュマンは去っていった。
「だから何なんだよ…」
さっぱりした性格の彼は言動もさっぱりしており、若干説明不足なことが多い。
一人納得して去る五兄に、フラッシュマンは疲れたように呟いた。





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