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□たまにはいいじゃない
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さて、捻くれ者で恥ずかしがり屋の君は、どうやったら受け入れてくれるかな。



たまにはいいじゃない



すいすいと、ふわふわと。
基地の室内プールでDWNの水中戦闘ロボット、バブルマンは心地よさげに泳いでいた。
室内プールは彼の部屋に隣接されているため、よくここで漂って時を過ごす。
浮かんでは潜り天井の窓から見える空の青と太陽の光を水中から眺め、末弟が
喜ぶ天気だなとバブルマンはぼんやり思う。
おそらくまた木や草花の世話をしに末弟は今日も森へ出かけているだろう。
そんなことを考えていると、ざぶんと自分以外がプールのなかに訪れた音がした。
音の方へ顔を向け、沈んでくるその姿を視認する。
青と黄色と灰色で構成された色、三つ下の弟機体のフラッシュマンだった。
そばに近づいていき弟と視線をあわせる。すると弟は何やら不機嫌そうな表情をしていた。
「どうした?」
とん、と水底に足をつけた弟に、わざわざ水中に訪れたこと、不機嫌そうなこと
両方への意味を込めた言葉をかける。
「水んなかいるときは通信切るなっていってるだろ、バブル兄貴」
トントンと聴覚センサーを叩きながら防水マスクごしにフラッシュマンは口を開いた。
「え、ああ…ごめん、つい。それで?」
どうやら通信も切っていて、プールの上から声をかけても気付かない水底近くに
いた自分を探していたようだ。
「エアー兄貴が呼んでるぜ、次の任務の侵入経路について話したいだと」
「わかった、じゃ、上まで運ぶからそっから運んでくれ」
「そのつもり」
水中用ではない機体のため、沈んで泳げない弟に交換条件を持ちかけるとあっさり承諾された。
長いハシゴをいちいちのぼるより運んでもらったほうが楽、といった考えだろう。
お互い様、とバブルマンは思う。バブルマンは水中用の機体で陸上移動が不得意なため、
長めの距離はよく兄弟機に運んでもらうのだ。
バブルマンはフラッシュマンの背面から腕を回して体を抱え、うえまで泳ぎ始めた。
ふと、バブルマンの視界に天井の窓から見える空の青と太陽の光が見えた。
抱えているのは光を放ち時を止める青い機体の弟。

何か似てるなぁ。きれいじゃない。

そんなことをいえばこの弟は否定しながらすごく冷めた目で自分を見るだろうな、と
思いながら泳ぎ、すぐに水面に辿り着く。
プールサイドに二人とも上がり簡単にタオルで水気を拭いて、今度はフラッシュマンが
バブルマンを持ち上げた。



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