Main3

□表情
2ページ/7ページ






少しの間をおいて、メタルマンがマスクの奥で口を開いた。
「お前へのリスクは承知している。しかし、この後俺は先発のクラッシュと合流しお前たちとは違う任につく。
 こちらは、敵からの爆撃余波が大きいことが懸念されており、こちらの方がお前へのダメージリスクがでかい為、メンバー変更は不可能だ」
赤いアイセンサが感情なくフラッシュマンを見つめる。
「リスクを承知で博士からの依頼だ。勿論、あちらにもその点は言い聞かせてある。破った場合には
 ペナルティを負わせる旨も伝えている。万が一の際はお前の気のすむ罰を与える許可も得ている」
「………………」
「繰り返すがこれは指令だ、フラッシュ。拒否は許されない」
メタルマンが淡々と言う。
「………………」
冷淡な紅色のアイセンサを静かに見て、しかしフラッシュマンは何も言わない。
代わりに、チッ、とよく響く舌打ちを返事にして、フラッシュマンはデータファイルダウンロードの許可を下す。
送ったデータを回路にインストールするまでを眺めたメタルマンは、見届けたあとに踵を返した。





敵機体ごと扉を切り開き、突入してからクイックマンはブレーキをかけた。床と足が激しい摩擦で熱を産み、火花が散る。
それが収まってからようやく、抱えていたフラッシュマンを下ろした。
下ろしたと言うよりも抱えるのをやめた、と言った形に近く、半ば落とされたようなものだった。
フラッシュマンはずっと、クイックマンに小脇に抱えられていたのだ。
「……………」
しかし、フラッシュマンはメタルマン以上に表情のないクイックマンをちらりと軽く睨むのみで何も言わなかった。
案の定、睨んでも最早こちらを見てもいない。鉄面皮と名高い赤い彼。
そんな彼に何か言っても無駄だとフラッシュマンは知っているからだった。
「あ゙ー……」
低い声を殊更低くし、フラッシュマンが呻く。
恐らくはメタルマンの小言のせいだろう、フラッシュマンに負荷がかからぬようハイスピードではなかったにせよ、
クイックマンの速度で揺らされればそれはそれは疲れるものだった。敵との戦闘も、動くことすらしていないのにひどく疲れた。
情報奪取のためにメインコンソールにふらふらと近寄りアクセスを試みる。
直ぐ様ファイアウォールとセキュリティが警告を飛ばしてくるのを、いつもならばどうなぶってやろうかと
微笑ましく思うものを、今となっては面倒としか感じないため速効性の崩壊型ウイルスを送り込んだ。
同時に、工場区内のエネルギーの流れを押さえ、要所数ヵ所に絞り、エネルギーをとどめる。
最終的には施設ごと爆破するため、その際のダメージがより大きくなるよう手配するのだ。
こちらに食らいかかってくるプログラムたちを返り討ちにしながら、ダミーを掻い潜りトラップをかわし、セキュリティを次々と解除していく。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ