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□露見3
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「聞いたぞスネーク、夜這いとはお主やりおるな!!」
「死んで。頼むから死んで」
「美しくないな、スネーク。女性へのアプローチは紳士的なだけではダメだが、だからとて
 がっつきすぎるのはよくない。粗暴と強引さは似て非なるものだ。ただの粗暴など非常に美しくない」
「だから死ねよお前等。何で夜這いって広まってんの死ねよお前等。寧ろ殺してやろうか」
帰還した途端シャドーマンとジェミニマンに面白半分に絡まれて、スネークマンはうんざりと吐き捨てた。
バブルマンに言われ勇気を出して顔を合わせに行って、本人とは仲直りをして、
────しかしその兄機体から刄を向けられ、庇われる形で逃げてきたというのに。
いつのまに、しかも何故誤解を交え広まったのか。帰ったら帰ったでこれだ。厄日だ。
どっかりとソファに座り込むと、あのね、とこてんとスパークマンが覗き込む。
「あのね、タップがね、丁度メタルさんのとこに行っててね、クイックさんの乱闘騒ぎが
 起こったの知ってね、爆笑しながらさっき音声通信でね」
「あー、オーケイ、もういい、よく分かった。教えてくれてありがとな、スパーク」
「えへへー」
一生懸命事情説明してくれたスパークマンをよしよしと撫でて、スネークマンは
駒を模した仲間機体を全力で殴ろうと内心誓った。
その背に、ドアから入ってきたまた別の機体からの声がかかる。
「ん? おっぱいに顔埋めてぱふぱふ羨ましいセクハラしたのじゃ飽き足らず、
 日が落ちる前だってのに夜這いしてきただって?」
「お前も殺すマグネット」
赤い目に炎を灯してゆらりとスネークマンが立ち上がった。
のほほんとしながら、無自覚なのかわざとなのか地雷にピンポイントに突撃したマグネットマンに銃口を向ける。
そんなぎゃーぎゃー喚くのをBGMに、ハードマンがぽつりとこぼした。
「阿呆らしい…」
ニードルがいないとすぐこれだ。
E缶を傾けながら呟くと、ん? とスパークマンがまたこくびを傾げた。
「まぁ、皆フラッシュさんのこと知らなかったし、びっくりしたんだよ」
「あー、あの人女性型だったんだってな。まだ俺実物見てないけど、想像つかねー。
 正直オカマにしか見えねえんじゃね?」
「それは失礼だよハード。あと、タップに画像送ってもらったけど、ちゃんとグラマーな美人さんだったよ」
「美人さんねぇ…」
「あー疑ってるでしょー。画像転送するねー」
「いや別に、……お、おう…」
言葉途中で一方的に送られ、そのデータの中身への衝撃にハードマンは狼狽えた。
それを何ととったのか、スパークマンは、ね?とまた首を傾ける。
「ね? グラマーな美人さんでしょ」
「あ、あぁ……」
何とコメントしていいかわからず、ハードマンは取り敢えずぼかした。
確かにグラマーな美人と言えるが、まだ男装時のイメージが強く、妙に同一人物だと合致できない。
人間ならば、知り合いが性転換したらこんな気分になるだろうか。そんなことを回路の隅で思う。
「待ってスネーク! その角度はダメ!! 稼動域的にその角度はダメ!!」
「喧しい!!」
赤と緑の機体のやりとりと、そんな二機体を見て爆笑している二機体を見やり、
ハードマンは半ば現実逃避しながらやれやれと溜め息を吐いた。
「ニードルが帰る頃にはやめてねー」
のんびりとしたスパークマンの声だけが落ち着いていた。





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