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□露見2
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「うん、いや、あのね? 僕もあの子の性格考えずに中々無理なお願い言っちゃったとは思う。
 それは悪かったよ。けど、よりによってシカトはないんじゃないかなと思うんだ」
三期基地にあるスネークマンの個室。
フラッシュマンに内緒ですぐにそこを尋ね、バブルマンはこんもりと寝台に籠もり
そしてかたかたと震える新型機を見下ろした。ちょっと呆れる。
せっかく尋ねたのに君何してんの。
そんな気持ちだった。すると、塊が叫んだ。
「ち、ちが、言い訳ですけど違うんですッ!!」
「?」
「ごめんなさい、期待裏切って本当にごめんなさい、けど、言い訳ですけど、本当に違うんです……ッ」
顔も見せないまま言葉が続き、しかも意味がよく分からないため、バブルマンは困ったなぁと頬を掻いた。
寝台の布団に包まった塊、もとい、スネークマンはバブルマンが来たときからこうなのだ。
来訪を告げるとスネークマンの部屋のドアは開いたが、入室したその時すでに
緑の尻尾がするりと寝台に潜り込んだところだった。
そして今尚、どんなに言っても出てこない。怒られるとでも思っているのだろうか。
「ねぇスネーク、僕フラッシュへの態度や頼みごとと反対のことになったのを
 怒ってるわけじゃないし、殴り込みに来たんじゃないんだ。ただ、理由を知りたくて
 質問に来たんだよ。せめて顔見せてくれないか?」
これじゃ話も出来ないじゃないか。
「……っ」
塊が揺らぐ。
「何が違うんだい? 言い訳って、どういう意味かな?」
穏やかに問うと、少し時間を置いて天岩戸、ではなく、布団がずるりとずれる。
緑の俯いた頭が出てきた。
「バブルさん…」
恐る恐る見上げるその紅いアイセンサーは、人の幼子のように潤んでいた。
「……!」
穏やかに微笑んでいたままの表情でバブルマンが固まる。
しかしそれは別に新型機が泣きそうな顔だったからではなく、スネークマンの顔自体が驚くほど真っ赤だったからだった。
部屋の冷房は寒いくらいなのに。
「やぁスネーク、二週間ぶりだね」
何とか持ち前の心の広さで挨拶する。
すると、スネークマンは申し訳なさそうに言葉を続けた。
「ごめんなさいバブルさん、俺、俺フラッシュさんのこと、シカトしてたわけ
 とか全然じゃなくて…! 信じてください、それは本当に違うんです…!」
「けれど、避けてはいるんだろう?」
「う、あの、…はい。フラッシュさんを避けは…しました…。けど、でもそれは…
 俺…そうしないと、あの…あの…」
そこまでで言葉が止まり、数秒間を置いてかぁっとまたスネークマンの顔の赤みが増した。
それに「……へ?」とバブルマンが驚く。何この反応。
視線は狼狽えるように伏せられ、唇は言う言葉を探して開閉する。しかし、続きの声は何も出てこない。
(…あー……?)
何となく、先ほど「言い訳」とスネークマンが言ったものがどういった内容か、
バブルマンは何か分かった気がした。
シカトではないが避けている。妹機体は顔も合わせてくれないと言っていた。
そして、避けている理由を思うと、より赤面。
おいおいおい、これはもしや。もしかして。もしかするともしかして。






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