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□露見2
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飲み会は欠席。任務では最低限の会話。基地内では言葉どころか視線すらろくに交わさない。
そもそも姿なんてここ最近まともに見ていない。
たまたま廊下ではち合わせた時なんか酷かった。





「凹む」
「何、装甲でも痛めた?」
「違う」
むす、とフラッシュマンがぼやく。
唇を尖らせて言う様子は、しかし不機嫌そうというよりはしょんぼりとしていた。
傍にいたバブルマンが怪訝そうに眉をひそめる。
「どうした、フラッシュ?」
「男型に戻りたい」
「えー、僕はやだなー」
言いながら、そっと頭を撫でた。同期唯一の女性型機体のこの青。
バブルマンはその大らかな度量からか、普段から何かと彼女の相談役になっていた。
今は過保護な赤い兄たちがいない中二人きりということもあり、今いるリビングでも話しやすいだろうと先を促す。
「やっと女型に戻ったのに。二週間もたってないじゃないか。どうしたの、何かあった?」
「…………だって……」
「うん」
「………だって、避けられるんだ」
「は?」
予想外の言葉に思わず声が漏れた。同期の皆が皆構い倒す中で誰が?と咄嗟に思う。
「飲み会はこないし、任務では一切雑談しないし、視線もそらすし、…顔も合わせない」
「はぁ…」
「こないだなんかな? 廊下で鉢合わせたら、回れ右されたんだ」
声かける暇もなかった…。
「…………」
嫌な予感がする。半ば茫然と聞きながら、バブルマンはフラッシュマンの言葉を待った。
「スネークが、俺のこと嫌いになったっぽくて、避けるんだ……」
しゅん、と肩を落とす。
フラッシュマンは、二週間前の任務で胸部装甲に被弾し、女性型だと隠していたことが
同行していたスネークマンにばれた。
しかしそのことで、いままでずっといい友人レベルな関係だった新型機が掌返した
態度になってしまい、それに酷く落ち込んでいたのだ。
(あっちゃー…)
バブルマンはほぼ予想していた名前が出たことに内心額を押さえた。
男装していたときとかわらぬ関係でいてほしいと願ったのだが、余計に意識させるはめになったのかもしれない。
「……あー…。まぁ、流石にその、…びっくりしたからじゃ、ないかな」
何とフォローしていいか分からず、バブルマンは取り敢えず言ってみる。
「びっくりしたなら、最初はどうして普通の態度だったんだよ。女型だって
 ばれたあとから徐々に避け始めたんだぞ」
「あー…」
返す言葉を失い、実際にも額を押さえた。そんな三兄の心情を知らず、フラッシュマンは俯きつつぽつりと零す。
「やっぱ、無駄なものついてるからかな…」
「え?」
「これだよ。胸」
「いや無駄って」
「重くて邪魔なんだよこれ」
無駄に揺れるしさ…。
言いながら、胸元のそれに下から手を添え、たぷんと両方とも持ち上げた。
憎らしげにそれを見下ろし唇を尖らせるさまは、何というかこう、とてもよろしくない。
ああ、目の毒だ。
バブルマンは目蓋を閉じ、さてこの男装するだけしておいて、男性脳を与えられている機体の
思考回路を何一つ理解していない妹機体に、何と説教すべきか考えた。
(こういうこと平気でするのを傍において、前とかわらずな態度とれってのも、酷な話かな…)
無茶ぶりしてしまったらしい新型機に同情と謝罪の念を抱いた。
────取り敢えず、彼は今日は基地にいるはずだからあとで話を聞きに尋ねてみよう。
妹機体を撫でながら、バブルマンは小さく決意した。





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