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□露見
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今まで見てきたものが、全て見ているのだと、知っているのだと思っていたものが、ただの一面でしかなかった時。
信じていたものが覆された時。
知っていた姿が瓦解して、認識する対象は自分の回路内で今までとは全くの別の何かになる。
しかし言ってしまえばそれはただのデータの上書きに過ぎない。更新と同じに過ぎない。
観察し分析しを得意とするこの機械の身で、驚くことがありこそすれども手早く処理をしてしまえば戸惑いなど生じない。
自身の認識の甘さを恥じて、過去の認識を捨て対象のデータ更新。
そうして積み重ねて行くことを経験と呼ぶのだと笑っていた姿が回路を過った。




「危ない!!」
ばふん、と柔らかな何かに顔が包まれる。
とても脆そうなくせに、やたらみっちりと顔面を覆う暖かなそれに、排気を妨げられた。
途端に聞こえるかなり近い場所からの銃撃音、崩れる瓦礫、巻き上がる硝煙。
現状把握すれば、自分は今、同行した機体に押し倒され庇われているらしく、背中が痛い。
少しして、音が静まる。
音が静まってからも辺りを伺うように、自分に覆いかぶさっている機体は動かない。
片腕で抱えるように自分の頭を守られているため、頭は痛くないが、いい加減重い。
そう思ったタイミングで、相手が機体を離した。
「ぷはぁっ!!」
顔を覆っていたものが離れて、漸く排気する。そして、視界に飛び込む光景に絶句した。
「あっぶねーなくそっ! 潜伏型かよ!」
悪態を吐きながら機体を起こす青い姿は酷く見慣れているのに、ある一点のお陰で頭が真っ白になる。
「取り敢えず片付けはしたみてえだが、とっととずらかったほうがいいな」
自分は、目の前の青い機体と任務についていた。切り上げようとしたところで、
潜伏していたらしい敵機から銃撃され、一発の光弾が青に直撃した。装甲がばりんと割れ、
しかし内部までは行かなかったらしく剥がれた程度だった。そんな状態で、痛みに
苦しむより先、青い色は自分の身を案じて庇ってくれたのだ。
なのに自分は礼も告げられず、ただただ言葉を失って青い色を凝視していた。
心配そうに、青が装甲が一部剥がれた状態で、再度こちらに視線を落とす。
「大丈夫か? スネーク」




そうして、ぷるんと目の前で柔らかなそれが揺れた。











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