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それは、ふとした好奇心。




「おーまーえーなー…」
「何さー」
ヒートマンを小脇に抱えフラッシュマンが低い声で唸ると、ヒートマンは悪怯れなく答えた。
両機体ともあちこち黒く煤け、深くはないもののそれなりにダメージを負っている。
ヒートマンを抱えたフラッシュマンの真っすぐむかう先はメンテナンスルームを兼ねるラボ。
二人は任務から帰還してきたばかりだった。
「何さーじゃねーよ。バブル兄貴いねえのに暴走してくれるな頼むから」
「フラッシュが止めてくれたんだからいいじゃーん」
「けど無傷じゃねーんだよ。お前の炎は俺にも効くの。分かれよ」
「だからごめんってー」
久しぶりの兄との任務。
だからというわけではないはずだが、戦いの楽しさにヒートマンは暴走してしまったのだ。
ラボに入り、フラッシュマンはヒートマンをそっと台に下ろす。
腰を屈めて視線をあわせ、やんわりと頬に白い手を当てた。
「……どっか強く痛む箇所、あるか?」
「…んーん」
優しく、労るように機体を検分するフラッシュマンに、ヒートマンは首を横に振る。
正直、ダメージの度合いはフラッシュマンの方が酷かった。アトミックファイヤーは
殆どの兄弟機に効く特殊武器だった。
それなのに修理器具を取りにいこうとする青い腕を、ヒートマンは捕まえてひっぱる。
「…ん?」
不思議そうに弟を見やるフラッシュマンの腕をさらに引き、隣に座るようヒートマンが促した。
「何だ…?」
それに逆らわず、フラッシュマンは腰を下ろす。
そうっと、視線を伏せたままのヒートマンを伺うように覗き込んだ。
「おい、…どうした?」
「……ごめんなさい」
殊勝に呟かれる謝罪に、フラッシュマンは何だ、とため息を吐いた。
ヒートマンの両脇に手をいれ、ひょいと膝に抱き上げる。
そのまま胸元に頭を預けるように優しく抱かれ、気にしてんのかよとからかうように呟かれた。
「もう、素直に謝ったのにこれだよ」
「普段からそうしてろ」
意地悪げに言いながら、しかし優しい声音に、ヒートマンは本当に久しぶりの兄との任務だったのにと振り返る。
最近はオフですら構ってもらう時間が減り、喋ることも実は少し久しかった。
この兄は、もう二つ上の兄と想いを通わせている。
それ自体は別にいい。
ただ気に食わないのは、この青をやたらと独占されることだった。
仕方ないのかもしれないが、お陰でオフに顔を合わす時間は減り、そしてまた、
彼らが恋仲なことは関係ないのかもしれないが何の巡りあわせか任務まで暫く
組むことがなかったとなれば、悔しい気持ちくらい許されるだろうとヒートマンは思う。
連番のこの兄は、恋仲になっていることが自分にはばれていないと思っているらしいが、
実際にはかなり初期から知っていた。
「こんなのすぐ直る。気にすんな」
むにむにと頬を痛く無い力加減で捻られる。
自分は彼にとって甘えさせてくれる対象だと、ヒートマンは理解していた。





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